研究課題/領域番号 |
16K17716
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
日高 義将 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (00425604)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自発的対称性の破れ |
研究実績の概要 |
対称性とその自発的破れは,現代物理における重要な概念の一つである.連続対称性が自発的に破れるとそれにともないギャップを持たない南部ゴールドストンモードが現れることが知られている.この定理は,保存系について定式化されたもので開放系での自発的対称性の破れと南部ゴールドストンモードの対応関係はこれまであまり考えられていなかった.本研究では,量子系を含む開放系での対称性の自発的破れと南部ゴールドストンモードについて議論した. 保存系と開放系の大きな違いは,通常の意味での保存則が成り立つかどうかである.保存系では,連続対称性があるとそれにともなって保存量が存在する.例えば時間並進,空間並進対称性があると,エネルギー,運動量が保存する.一方,開放系では,外界との相互作用によりこれらは保存しない.では, 連続対称性にともなう保存則が重要な役割を担う南部ゴールドストンモードの定理はどのように修正されるだろうか.我々はこの問題を解決するために自由度が2倍化されたSchwinger-Keldysh経路の経路積分を用いた.保存系では倍化された自由度それぞれに対応した保存量が存在する.開放系は2つの保存量のうち通常の保存量に対応する一つが保存しなくなる.自発的対称性の破れは一方の残っている対称性を用いて議論することができる.先行研究では,開放系での対称性の破れの場合,伝播モードではなく拡散モードが現れうることが指摘されたがどのような場合に拡散モードになりどのような場合に伝播モードになるのかについての一般的な関係はよくわかっていなかった.本研究では,経路積分表式でのWard-Takahashi恒等式を導出し,開放系において自発的に対称性が破れた場合にどのような分散関係が実現するかの一般的な公式を導いた.これにより開放系を含む南部ゴールドストンの定理の厳密な定式化が可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子開放系の南部ゴールドストンの定理の導出に時間を要したが非常に一般的な公式を得ることができたので結果として概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている開放系での南部ゴールドストンモードの分散関係の公式を用いて量子開放系を含めた南部ゴールドストンモードの分類を行ない論文にまとめる. さらに南部ゴールドストンの定理を広がりを持った物体に対する対称性の破れや超対称性の破れについての問題に拡張する. 低エネルギー有効場の理論としての流体方程式が近年議論されている.これを対称性の観点から理解することでより系統的に低エネルギーの有効場の理論を構築できるようにする.
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