研究課題
本研究では、レーザーによる強磁性体の磁化反転機構の解明と、磁化反転機構の普遍性の追究がテーマである。実験手法として、時間分解型のX線分光、特にシンクロトロン放射X線とX線自由電子レーザー(XFEL)を用いて、この課題に取り組んだ。対象とする物質として、合金系と酸化物磁性体がある。主な測定手法は、強磁性体へのX線磁気円二色性(XMCD)である。時間分解XMCD測定により、元素ごとのダイナミクスを観測することができ、2種類以上の磁性元素が含まれる系での磁化反転の本質に切り込める。具体的に得られた結果は下記のものである。まず、X線自由電子レーザーSACLAのビームラインBL3での時間分解XMCD測定に成功した。800 nmのチタンサファイアレーザーをポンプ光として室温強磁性体の合金薄膜FePtに照射し、PtのL端での時間分解XMCD測定を行った。磁化の消える時間スケールが1ps程度であり、Feサイトより長いことが分かった。このような元素別のスピンダイナミクスは時間分解XMCDで初めて明らかになった。SPring-8の東大物性研ビームラインBL07LSUでの時間分解XMCD装置建設については、論文として出版することができた。さらに、酸化物磁性体であるペロブスカイトLa0.33Sr0.67FeO3の薄膜に対し、硬軟X線回折により、電荷とスピンの秩序の臨界膜厚を決定した。この結果も論文として出版した。カー顕微鏡とファラデー顕微鏡によるレーザー照射効果の観測も行った。レーザーの円偏光に依存した磁化反転を探索し、Co/Ptの超格子薄膜に対して発見した。特に、薄い薄膜ほど起こりやすい現象であることが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)
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