現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交差した線ノードという新しいタイプのトポロジカル半金属状態についての一般的な分類理論を構築するのに成功し,また,具体的な候補物質も発見した[S. Kobayashi, Y. Yamakawa, A. Yamakage, T. Inohara, Y. Okamoto, and Y. Tanaka, arXiv:1703.03587]. さらに,バンド構造のみからトポロジカル絶縁体の不変量を決定する方法を見出した.これを用いてトポロジカル物質探索をより効率的に行うことができるようになった.これは,これからの研究をさらに加速させるものである. トポロジカル半金属における量子輸送現象についても,線ノード半金属における光誘起異常ホール効果の発見などの成果を挙げることができた[K. Taguchi, D.-H. Xu, A. Yamakage, and K. T. Law, Phys. Rev. B 94, 155206 (2016)].
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したトポロジカル不変量をバンド構造のみから判定する方法を適用してトポロジカル物質探索を続ける.また,バルク物質だけなく,薄膜におけるトポロジカル絶縁体・半金属相の探索も行う.一つの物質でも膜厚により様々なトポロジカル相が現れ,制御できることが期待される.さらに,薄膜における歪の効果も調べつつある.一般に歪は擬似的な磁場として扱われ,電子状態はランダウ準位を形成するが,線ノード半金属においてはそのノード構造に由来した特徴的なランダウ準位が生じることが分かりつつある.これは輸送現象に大きな影響を与える. ごく最近では,ディラックやワイル電子以外に,三重縮退点をもつトポロジカル半金属(スピン1フェルミ粒子)状態なども見つかっている[B. Bradlyn et al., Science 353, 6299 (2016)].このようなスピン1トポロジカル半金属や線ノードトポロジカル半金属における量子輸送現象の解明を目指す.具体的には磁気抵抗や熱伝導および熱起電力の振る舞いを明らかにする.トポロジカル物質の量子輸送現象については実験[名大工 岡本佳比古准教授ら.Y. Okamoto, T. Inohara, A. Yamakage, Y. Yamakawa, and K. Takenaka, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 123701 (2016)]との共同研究も行っており,その実験結果からのフィードバックを反映させて更に理論研究を推進する.
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