研究課題
平成28年度に引き続き、今年度もウランやトリウム化合物などの単結晶を様々な方法で育成し精密な物性測定を行った。その中で、ThCu2Si2において純良な単結晶の育成に成功した。ThCu2Si2は正方晶ThCr2Si2型(空間群No.139)の結晶構造で、これまで物性についての報告が無い。本研究ではSnフラックス法で単結晶を育成し、できた単結晶試料の大きさは0.5*0.5*0.05 mm3の小さく薄い板状のものである。その純良単結晶を用いて電気抵抗、比熱、ドハース・ファンアルフェン効果の測定を行い、その物理的性質を明らかにした。電流方向J||[100]の電気抵抗の温度依存性では、室温から低温にかけて電気抵抗は直線的に減少し、残留抵抗ρ0=0.83 μΩ・cm、残留抵抗比RRR=28の純良な試料であることがわかった。比熱の温度依存性は低温領域ではC=γT+βT3で説明され、電子比熱係数γ=3.7 mJ/(K2・mol)が求まった。さらに、試料の純良性を反映して明瞭なドハース・ファンアルフェン振動を観測することができ、その振動数の角度依存性によってThCu2Si2のフェルミ面を予測することができた。磁場方向H||[001]でのそれぞれのブランチのサイクロトロン有効質量は0.25~1.02 m0(m0: 電子の静止質量)であった。さらに神戸大学の播磨尚朝教授のバンド計算の結果と対比させることでフェルミ面の詳細な形状を明らかにすることができた。それと同時に、Thに無いはずの5f電子の部分状態密度がフェルミ面に寄与していることが示唆された。また、重い電子系超伝導体CeCu2Si2の電子状態の重要な手がかりを得た。その他、強磁性超伝導体URhGeと同じ結晶構造TiNiSi型直方晶であるYbNiSnについても純良な単結晶を育成し、a軸方向での詳細な磁気相図を決定することができた。
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Progress in Nuclear Science and Technology
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J. Phys.: Conf. Ser.
巻: 807 ページ: 052012(1-5)
10.1088/1742-6596/807/5/052012