研究課題
強相関遷移金属化合物界面の電子構造計算を実現するため、その基盤技術である量子モンテカルロ法に基づく量子不純物ソルバーの開発を今年度行った。特に、混成項展開法 (CT-HYB)、相互作用展開法 (CT-INT)の2つの異なる原理に基づいたC++コードを開発した。双方とも、スピン軌道相互作用の取り扱いが可能な先進的なコードである。前者に関しては、物理学シミュレーションのためのプログラムライブラリ、「ALPSCoreライブラリ」の基盤の上に実装された。プログラムコード、および詳細な実装を解説した論文が公開されている [HS, E. Gull, P. WernerComputer Physics Communications 215, 128 (2017)]. 後者に関しては、実装は完了しており、幾つかのテスト計算を行った (スピン軌道相互作用を含む単軌道ハバード模型のクラスター動的平均場近似計算など)。第2年度に公開を予定している。また、研究の実施計画を策定した段階では予定していなかったが、量子多体系の効率的な計算に欠かせない基盤技術として、量子モンテカルロデータの疎表現の発見と、それを利用した新しい解析接続法の開発、量子モンテカルロデータの圧縮技術を開発した。現在論文2編が審査中である (arXiv:1702.03054, arXiv:1702.03056). 前者は、界面における準粒子バンドの解析に利用することを予定している。後者の技術に関しては、量子モンテカルロ法を大幅に高速化が可能であるため、2つの量子不純物ソルバーへの実装を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画通り、プログラムコード・手法開発が進展している。加えて、当初予期していなかった、本研究計画の推進に大きな寄与をもたらす、量子モンテカルロデータの疎表現の発見が行われた。2つを勘案すると、当初の計画計画よりも順調に進んでいると結論できる。
動的平均場近似計算コードの開発を行うと共に、量子モンテカルロ法データの疎表現の利用を推進する。特に、後者に関しては、2つの量子不純物ソルバーへの実装を進め、現実の物質の計算への適用と性能評価を行う。
当初の予定以上に早く成果がでたため、当初購入を予定したコンピュータ機器の購入を取りやめ、成果発表のための旅費を増やした。そのため、使用額に乖離が生じた。
第2年度は、すでに成果が得られている話題に関する宣伝活動に旅費を主に使う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Computer Physics Communications
巻: 215 ページ: 128-136
10.1016/j.cpc.2017.01.003
巻: 213 ページ: 235-251
10.1016/j.cpc.2016.12.009
Physical Review B
巻: 94 ページ: 245134 (1-9)
10.1103/PhysRevB.94.245134
http://shinaoka.sakura.ne.jp/activity.html