研究課題
本研究は、極性‐非極性構造相転移を持つ層状遷移金属ダイカルコゲナイドMoTe2における構造相転移温度の制御と、極性構造の不安定性と特異な超伝導や熱電物性との相関について明らかにすることを目的に行った。MoTe2ではTeをSeに置換する化学圧力やピストンシリンダー型圧力セルを用い物理圧力を印加し構造相転移消失させた場合に超伝導転移温度が上昇することを発見した。熱電物性はゼーベック係数やネルンスト効果の測定を圧力下において行った。50K以下での電気抵抗は圧力によりほとんど変化しないが、ゼーベック係数が構造相転移の臨界圧力付近において0GPaに比べ2倍程度増大することを明らかにした。この結果、熱電性能の指標である出力因子が一般的な熱電材料であるBi2Te3の5倍以上の巨大な値が実現することを発見した。この臨界圧力におけるゼーベック係数の増大については、構造相転移に起因するフォノンのソフト化と電子とフォノンの非弾性散乱のモデルを用い説明を試みている。またネルンスト効果では極性構造と非極性構造で振る舞いが大きく異なり、電子の移動度や散乱機構と結晶構造に相関があることが示唆される。さらに新たな極性金属材料の探索として、極性-非極性の構造相転移を持つ層状遷移金属ダイカルコゲナイドAgCrSe2の大型単結晶の作製し、Ag欠損やCrサイトの化学置換を用いキャリアドープや構造制御を行った。AgCrSe2はもともと0.3eV程度のギャップを持つ半導体であるが、キャリアドープによる金属化に成功している。さらに磁気抵抗において巨大な正の磁気抵抗を見出し、極性金属による新奇物性の開拓に成功している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件)
X線分析の進歩
巻: 49 ページ: 16
Physical Review B
巻: 95 ページ: 100501-1-5
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.100501
AppliedPhysics Letters
巻: 110 ページ: 172901-1-4
https://doi.org/10.1063/1.4979644
巻: 95 ページ: 224440-1-5
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.224440