研究課題/領域番号 |
16K17737
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 大輔 東京大学, 物性研究所, 助教 (70613628)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / 超強磁場 / 電気伝導度 / テラヘルツ |
研究実績の概要 |
高温超伝導体の超強磁場物性を調べることを目的とした、超伝導ギャップエネルギーに相当するテラヘルツ領域の電気伝導度測定を行うため、購入したZnTe結晶と既存のチタンサファイアレーザーを用いて、測定系の構築に取り組んだ。しかし、チタンサファイアレーザーの経年劣化により発振特性が不良になったため、装置のメンテナンスを継続中である。 これに並行して、数百MHz程度の非接触高周波電気伝導度測定システムを改良することに成功した。これまで110テスラ程度の磁場までにしか適用できていなかった非接触型の共振プローブを改良することにより、140テスラまでの電気伝導度測定を行えるようになった。 東京大学総合文化研究科の前田京剛研究室から測定試料として最適な銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2Ox(Bi2212)のバルク単結晶(厚さ~20um)を提供していただき、140テスラまでの電気伝導度測定を行った。ボルテックスの混合状態で磁束が徐々に侵入することによる連続的な電気伝導度の増加を、磁場の関数として捉えることに成功した。数回にわたる破壊型超強磁場物性実験で、磁場発生に付随する衝撃波の影響によって薄い試料の端に亀裂が入り、測定データへの影響がスパイクノイズとして現れることが明らかになった。次年度は、試料をエポキシ樹脂でコーティングして強度を保ちつつ測定を行う工夫を取り入れる予定である。 また、予想外の展開として、140テスラまでの電気伝導度測定を遂行するうえで必要な極低温クライオスタットの小型化を行ったところ、非常に汎用性の高い性能を持つことがわかったため、磁性体を対象とした物性測定も試み、国際学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究目標は、テラヘルツ光を利用した磁気光学測定系を構築し、超伝導物性を超強磁場下で調べることであった。テラヘルツ光源の一次光となるレーザーの不調のため測定系構築のトラブルがあったものの、並行して行っていた別種の測定の進展により、超強磁場下での超伝導物性の研究は着実に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究目標は、引き続きテラヘルツ電気伝導度測定システムの構築に取り組むとともに、現在成果が出つつある数百MHz帯の非接触電気伝導度測定システムでの物性実験を精力的に行うことである。破壊型磁場発生装置のうち、200テスラまでの測定が可能な一巻きコイル法を用いて、磁場下での電気伝導度の温度依存性を測定する。伝導面に平行に磁場を印加した場合、極低温では超伝導体の上部臨界磁場が200テスラを超えることも予期されるため、730テスラまでの測定が可能な電磁濃縮法を用いた実験を行う。 また、28-29年度に得られた結果を投稿論文にまとめる予定である。
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