高温超伝導体の超強磁場物性を調べることを目的とした、超伝導ギャップエネルギーに相当するテラヘルツ領域の電気伝導度測定を行うため、購入したZnTe結晶と既存のチタンサファイアレーザーを用いて、測定系の構築に取り組んだ。しかし、チタンサファイアレーザーの経年劣化により発振特性が不良になったため、装置のメンテナンスを継続中である。 前年度までに、数百MHz程度の非接触高周波電気伝導度測定システムを改良することよって、140テスラまでの強磁場領域における電気伝導度測定を行えるようになった。本測定装置は反射型の配置で高周波特性を評価しているため、電気伝導度の絶対値を正しく評価するのが困難であるという課題が残っていた。これを解決するために、有限要素法ソフトウェアを用いて高周波プローブの電磁界解析を行い、反射された信号強度から測定物質の電気伝導度を求めるためのマスターカーブを算出した。測定物質を高周波プローブ上においたときの反射信号強度の温度依存性をマスターカーブを用いて評価することによって、磁場下での反射信号強度と試料の電気伝導度の対応付けをすることに成功した。これらの結果を、科学計測に関する英国の権威ある学術誌である「Measurement Science and Technology」において発表した。また、本測定システムを超伝導体の強磁場物性測定に広く利用することを目指して、超伝導物質の計測に関する研究会でのポスター発表にてアピールした。
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