研究課題/領域番号 |
16K17741
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大田 由一 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (60737237)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 光電子分光 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
平成28年度研究計画に記したように、光電子分光装置光学系の改良を行った。まずは空間分解能向上を目的としたレーザー光路の時間安定性向上についてだが、新規真空チャンバーを設計、ミラーマウントを安定性の高い製品と交換、波長板によるレーザー偏光の切替えやミラーマウント微調整の自動化機構を導入して光学系を組み直した。また、励起光源スポットサイズの狭窄化については、スポットサイズの拡大縮小機構についてNTTアドバンステクノロジーに設計を相談したところ、我々の励起光に合わせた設計を行うと高額になることが判明した。よって、まずは安価に入手可能なレンズとミラーマウントの組み合わせで、同様の役割を果たす機構を自主設計することにした。平成29年度は、試料測定によってこれらの改良結果に関する性能テストを行う予定である。 物性実験は予定通り、新奇超伝導体であるBiS2系超伝導体のSをSeで置換したBiSe2系、La(O,F)BiSe2系の低Fドープ試料LaO0.6F0.4BiSe2(仕込み組成)の測定を行った。その結果、BiS2系に比べてフェルミ面の数が倍多いことと、BiS2系と傾向は似ているものの、若干ことなる超伝導ギャップ異方性の観測に成功した。続いて、Fの仕込み値を増やした高ドープ試料LaO0.5F0.5BiSe2における実験を行ったが、フェルミ面トポロジーにLaO0.6F0.4BiSe2との大きな違いがみられていない。こちらは仕込みF値に対して実際の組成が大きく変化していないことが原因と考えられる。この件については試料提供者と相談し、より高ドープ試料が作成できないか思案中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物性研究に関しては、予定していた測定をほぼ行えたのでおおむね順調である。 実験装置開発に関しては、真空チャンバーの納入がやや遅れ、平成29年初めに新規光学系の組み込みとなった。組み込み自体は一カ月程度で無事終了したので、本来は性能テストまで平成28年度中に終える予定でいたが、光電子分光実験装置の一部故障が発生し、修理の完了が平成29年度4月となっているため、性能テストがまだ行えていない。修理が完了しだい実験装置に組み込んで性能テストを行う。当初の予定に比べ一カ月遅れ程度である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、平成28年度中に終えられなかった性能テストの実施と、物性実験としては重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導電子状態観測を試みる。 CeCoIn5に関しては、近年、分子線エピタキシーによる良質な薄膜成長が行われるようになっているため、当初予定していたレーザースポットを小さくしての単結晶試料での実験だけではなく、薄膜試料での実験も試みる。現在、試料提供者と相談し、薄膜試料を真空状態のまま我々の実験装置に輸送する方法を検討中である。
|