研究実績の概要 |
平成29年度は、まずはレーザー光電子分光装置のスポットサイズの狭窄化について性能試験を行った。改良前のレーザースポットサイズは500 μm程度であったが、改良後100 μm程度となった。また、光学系・試料マウントの改良により、試料の測定位置が長時間安定するようになった。次に上記装置を用いて重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導電子状態観測を試みた。まずは常伝導電子状態でのバンド分散観測を試みた。角度分解光電子分光には真空中で単結晶を劈開し清浄かつ平坦な表面を得る必要がある。CeCoIn5は劈開性が悪く十分な大きさの平坦表面を得ることが難しい。これまではそれが原因でバンド分散の観測ができなかったが、1辺200 μm程度の平坦表面に対して100μmのレーザースポットサイズを照射して測定可能になったことで、バンド分散を観測することに成功した。ここまでの結果から得られた実験条件を元に、極低温超高分解能レーザー光電子分光で超伝導電子状態の観測を試みた。結果、超伝導ギャップの異方性の観測に成功した。観測された超伝導ギャップ異方性と結晶方位との対応や再現性確認がまだ必要であり、今後はそれらを詳細に詰めていく必要がある。 本研究課題における3つのテーマの成果を要約すると、①BiS2(BiSe2)系超伝導体の超伝導ギャップ異方性観測に関しては、La(O,F)BiSe2の超伝導ギャップ異方性観測に成功し、国内学会・国際ワークショップで研究成果の発表を行った。②レーザー光電子分光装置のスポットサイズ狭窄化・長時間安定化に関しては、スポットサイズ100μmでの長時間測定が可能となった。③重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導電子状態観測に関しては、スポットサイズ狭窄化によりバンド分散の観測に成功し、超伝導ギャップ異方性を捉えることに成功した。従って、想定以上の成果を達成することができたと言える。
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