本研究は、f電子系化合物の磁場中に存在する量子臨界点(QCP)近傍に現れる異常な電子構造について明らかにするすることを目的としている。 f電子系化合物のひとつであるCeCoIn5は、c軸方向への磁場印加によって5 T付近に反強磁性秩序に起因するQCPが存在すると考えられてきたが、これまでに磁気秩序状態は発見されていなかった。そこで本研究初年度において我々は、数mKの超低温まで冷却できる核断熱冷凍機を用いてキャパシタンス法による磁気トルク測定行うための装置改良を行った。CeCoIn5の量子振動測定を行ったところ、20 mK程度に量子振動の振動数のとびを観測した。この量子振動の振動数のとびは、なんらかの磁気秩序に由来するものである可能性がある。本研究結果を国際誌において発表し、共同研究者が国際会議や国際ワークショップにおいて発表した。前年度は、さらに、CeCoIn5において反強磁性秩序相が存在するかどうかを明らかにするために超低温までのNMR測定を行った。その結果、反強磁性秩序形成に伴うスピン格子緩和時間の急激な減少は観測されなかった。本年度は、精密に磁場角度を制御する回転機構を取り付けるなど装置改良を行った。今後、超低温度で試料を回転させながら量子振動測定を行うことで、大きな進展が期待できる。
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