研究課題/領域番号 |
16K17746
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三澤 貴宏 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (10582687)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 強相関量子系 / トポロジカル物質 / 量子輸送現象 / 高温超伝導 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に沿って研究を進め、以下の研究成果を得た。 (1). 強相関電子系に対するソフトウェアの整備・公開: 昨年度すでに公開を行った、多変数変分モンテカルロ法のオープンソフトウェア「mVMC」、厳密対角化のソフトウェア「HΦ」の機能拡張を物性研究所のソフトウェア高度化プロジェクトの支援をうけて行った。mVMCはスピン軌道相互作用がある場合や非共面的な磁気秩序も取り扱えるようにした。また、HΦは、一般的な量子格子模型に対して実時間発展を行えるようにした。 (2).トポロジカル物質における量子輸送現象:トポロジカルディラック半金属と強磁性体の結合系における量子輸送現象の解析を、時間依存シュレディンガー方程式を直接解くことで行い、トポロジカルな性質を利用した効率的なスピン流-電流変換が可能であることを示した。これはデバイス応用に直結することが期待できる結果である。さらに、その逆効果であるトポロジカルディラック半金属で発生するスピン流によって生じる強磁性体側の磁化の運動についての解析もおこない、強磁性体側の磁化が反転する磁化スイッチ現象がおきることを示した。これは、トポロジカルディラック半金属では電場によって生じる電流が小さいことから、電流によるジュール熱がほとんど発生しない低散逸磁化スイッチ現象であり、スピントロニクスを利用したデバイス応用につながることが期待できる。 (3)厳密対角化のソフトウェア「HΦ」を用いて、フラストレート磁性体の有限温度物性の解析を行った。特に、フラストレートした二次元ハバード模型の解析を行い、量子スピン液体発現にともない比熱・エントロピーなどの熱力学量がどのように振る舞うかを明らかにして、量子スピン液体の実験的探索を行なう上で有用な指針を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、量子多体格子模型を取り扱うオープンソースソフトウェア「mVMC」,「HΦ」の公開を行い、機能拡張も順調に進んでいるため。さらに、他のグループによって、これらのソフトウェアを用いた研究も既に行われており、普及が順調に進んでいると判断できるため。また、トポロジカル物質の界面状態を用いた量子輸送現象の解析も行い、デバイス応用につながることが期待できる成果が得られているため、当初の計画にそって順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今までの進捗をもとに、最終年度の研究計画を遂行する。 最終年度はこれまでに開発・整備を行ったきた多変数変分モンテカルロ法を中心に、 強相関トポロジカル物質の安定性および、それの量子輸送現象の解析を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に行われる国際会議に参加するため。
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