| 研究実績の概要 |
平成29年度は、ブリージングパイロクロアと呼ばれる 一辺の長さが異なる大小の正四面体が交互に連なった非一様なパイロクロア格子上のHeisenberg反強磁性体を対象に、格子の非一様性（ブリージング性）及び局所格子歪みが系の磁気的性質にどのような影響を及ぼすかを調べた。通常のパイロクロア格子にも存在する局所格子歪みの効果に加え、ブリージング性を大小の四面体上の最近接相互作用の比J’/Jに取り入れ、モンテカルロ数値シミュレーションを行った結果、スピン-格子カップリングが比較的強い領域で、ブリージング性に起因した新奇なコリニアー磁気秩序が実現することが分かった。カップリングが強い領域では、通常（J’/J =1）のパイロクロア格子では波数(1/2,1/2,1/2)にBraggピークをもつcubic-symmetricな磁気秩序が現れるが、ブリージング性が強い系の低温相は、同じ波数点にBraggピークをもつものの、その磁気構造はnon-cubicで、大きい四面体上のスピン配置に縮退が残ることが明らかとなった。対応するIsing model のシミュレーション結果から、上記の縮退は、残留エントロピーに反映されることも明らかとなった。一方、スピン-格子カップリングが弱い領域では、J’/J=1の場合と同様のtetragonal-symmetric な波数(1,1,0)の磁気秩序が0<J’/J<1 の広い領域で実現することが分かった。これは、磁場下において磁化曲線に1/2プラトーの出現する結果とあわせて、対応するブリージングパイロクロアLiInCr4O8（J’/J~0.1）の反強磁性相の磁気的性質とコンシステントである。
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