研究実績の概要 |
近年,トポロジカル絶縁体・超伝導体など、従来の局所秩序変数とは異なる量で特徴づけられる量子秩序状態が精力的に研究されている.当初は自由電子系に対する研究が主であったが,現在,電子間相互作用が強く働く強相関系での研究が盛んに行われている.本研究では,強相関系である量子スピン系・ボーズ系に於けるトロポジカル状態を含むエネルギーギャップを持つ状態の端・表面状態の性質に注目した. 平成28年度は、2次元版のHaldane状態が期待される一般化されたSU(N)スピンで記述される蜂の巣格子ハイゼンベルク模型に注目し,その基底状態を量子モンテカルロ計算で調べた.この模型の基底状態は先行研究 [Phys. B316, 609 (1989), PRB 42, 4568 (1990)] により,SU(N)スピンの自由度のうち,SU(2)スピンで言うところの磁化mに対応する自由度と N の大きさを変えると基底状態が変化すると予想されていた.すなわち,Nが小さいところでは反強磁性秩序状態が現れるがNが十分大きいと、基底状態が(1)m=3k+1, 3k+2 (k:整数)のときコラムナーダイマー状態、(3)m=3k のとき2次元Haldane状態という2パターンのエネルギーギャップを持つ状態が現れる.今回,mとNを変えながら数値計算を行い,得られた結果を解析したところ,i)m=1 の場合は m>5 で, ii) m=2 の場合は m>8 で反強磁性秩序状態が消失しダイマー相へ転移することを明らかにした.特に m=1 の場合,Nの大きさに応じて現れるダイマー状態のパターンが異なることを示唆する結果が得られ,これまでの予想とは異なる新しい結果が得られた.また m=1, m=2 の場合に現れる各ダイマー状態の端状態を調べたところ,スピンの相関関数は指数関数的に減衰することがわかった.
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