本年度は昨年度に引き続き,変分モンテカルロ(VMC)法を用いた励起子絶縁体の安定性とメカニズムの解明を目指した理論研究を行った。VMC法の最適化の改良としてSR(Stochastic Reconfiguration)法の導入を行ったが,結果については未だ不完全であり,本年度の学会・論文発表に間に合わせることができなかった。しかし,励起子絶縁体の関連物質である有機化合物κ-(BEDT-TTF)塩について,一定の成果を挙げることができた。 平成30年度前半(4~9月)は,2軌道ハバード模型における変分試行関数に長距離クーロン相互作用とバンドの繰り込効果を導入するため,100以上のパラメータを同時に高速最適化することが可能なSR法の導入を行った。しかし,クーロン相互作用については改良できたが,バンドの繰り込みについては改良が困難であったため,brent法を併用した新たな最適化の改良を行った。平成30年度後半(10~3月)はこれまで開発した手法を1軌道の三角格子ハバード模型に適用し,この模型が有効で励起子絶縁体に近い構造を持つκ-(BEDT-TTF)塩の磁性とMott転移の解析を行った。さらに,これまでほとんど考慮されたことがなかった不純物効果をVMC法に導入し,より現実的な格子模型でのプログラム開発に着手した。この結果は励起子絶縁体の研究に応用化する予定であり,関連した結果については次年度開催される国際学会(6月:金研ワークショップ "Research Frontier of Advanced Spectroscopies for Correlated Electron Systems",9月:International Conference of Strongly Correlated Electron Systems 2019)にて,3件のポスター発表で報告する予定である。
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