研究課題
フロッケ・トポロジカル相に関する実験では、減衰の効果が無視できないため、減衰の寄与を取り入れた1次元系量子ウォークのフロッケ演算子に対する対称性について研究を行った。その結果、減衰項を含む非ユニタリー・フロッケ演算子では、トポロジカル相の議論で重要な時間反転対称性やカイラル対称性が破れていても、付加的な対称性として空間反転対称性(パリティ)を考慮すると、パリティと時間反転対称性とを組み合わせたPT対称性や、パリティとカイラル対称性とを組み合わせたパリティ・カイラル対称性が保たれ、従来のトポロジカル相の議論の自然な拡張が行えることが分かった。さらに、この非ユニタリー・フロッケ演算子に対する乱れの効果を調べることにより、PT対称性を一般化した擬ユニタリー性という対称性があることが分かった。さらにこの結果を踏まえ、トポロジカル数の導出も行い、数値的な検証も行った。また、Alternative2次元量子ウォークに対するユニタリー・フロッケ演算子の対称性、トポロジカル相、さらにエッジ状態に対する解析を行った。その結果、この系は、時間反転対称性が破れており、パラメーターによりclass A、またはclass Dに分類されることが分かった。また、トポロジカル数は、チャーンス数はなく、時間の自由度も加えたwinding数で特徴付けられることが分かった。この系に境界を課すと、バルクのエネルギーギャップが閉じる時にフラットバンドが現れるが、このフラットバンドは1次元系のトポロジカル相により特徴付けられることも分かった。さらに、境界上のある1点を初期状態とした時の時間平均極限測度の厳密解を求め、上記のトポロジカル数より期待されるバルクーエッジ対応の結果と比較した所、完全に一致することが確認できた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の研究計画は、(1)2次元系量子ウォークのフロッケ演算子の対称性とトポロジカル相を明らかにすること、(2)非ユニタリー・フロッケ演算子の対称性とトポロジカル相を明らかにすることであったが、「研究実績の概要」に記載の通り、これら研究は完遂し、現在はその発展課題に取り組んでいる。さらに、減衰項を含む非ユニタリー・フロッケ演算子の対称性に関する研究については、PT対称性やパリティ・カイラル対称性についての論文がPhysical Review A誌に、擬ユニタリー性に関する論文がInterdisciplinary Information Sciences誌に既に掲載されている。また、非ユニタリー・フロッケ演算子のトポロジカル相に関する研究と、Alternative2次元量子ウォークに対する研究についても、それぞれ論文を投稿済みであり、現在査読中である。このことから、本研究は、当初の計画以上に進展していると考える。
現在のところ研究は非常に順調に推移しているため、今後もすでに得られた結果を発展させる方向で研究を推進していく。まず、2次元系量子ウォークのフロッケ演算子の対称性とトポロジカル相が明らかとなったので、今後は3次元系量子ウォークのユニタリー・フロッケ演算子の対称性とトポロジカル相について調べる。さらに、エッジ状態に対する解析を行う。また、2次元系量子ウォークに減衰項を取り入れ、2次元系非ユニタリー・フロッケ演算子におけるPT対称性についての研究を行う。
十分に余裕をもって発注したPCの周辺機器の納入時期が、見積もり時の時期よりも大幅に遅延し、年度内に納入できない可能性が高まったため、注文をキャンセルせざるを得なかったため。
次年度に改めて発注する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 14件、 招待講演 7件)
Interdisciplinary Information Sciences
巻: 23 ページ: 95-103
10.4036/iis.2017.A.12
Physical Review A
巻: 93 ページ: 062116:1-13
10.1103/PhysRevA.93.062116