昨年度に溶融CuI-AgI混合系の実験とシミュレーションを行っており、今年度はその結果について、継続して更に詳しい解析を行った。CuI-AgI混合系は固体相で温度を上げると超イオン導電相を示し、CuとAgの2種類のカチオンのみが拡散できることが知られている。本研究の結果、Cu-Cu、Ag-Ag、Cu-Ag相関に関する部分構造因子は互いに近いスペクトルパターンを示し、CuイオンとAgイオンは置換された原子配置を好むことがわかった。このことは、同種カチオンで見られる共有結合性が、異種カチオンの間にも存在することを示唆しており、今後第一原理計算を行えば、それを確認できる可能性がある。本研究の先行研究として行っていた溶融RbI-AgI混合系ではRbイオンとAgイオンの配置の特徴が大きく異なっていたことを考慮すると、CuイオンとAgイオンは非常に相性が良く、イオン伝導を互いにサポートし合っていることがうかがえる。しかしながら、AgイオンとCuイオンの大きさなどの違いから、原子配置は完全な置換位置からわずかなずれがあり、その結果、アニオンとの距離や配位数などには違いが見られる。それらの違いは、CuIの超イオン導電相でアニオンが面心立方格子を形成する一方AgIでは体心立方格子を形成することと関係していると考えられ、イオン伝導体の骨格構造であるアニオンの副格子の種類を液体構造が決めている可能性を見出したと考えている。
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