研究課題/領域番号 |
16K17769
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
河村 洋史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (90455494)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 同期現象 / 相互同期 / 位相縮約 / 最適化 / 鞭毛 / 振動対流 / 反応拡散系 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
円柱座標系において速度・圧力変数で表示された3次元回転流体方程式系の進行振動対流に対する位相縮約法の定式化に成功した。本手法は偏微分・代数方程式のリミット・トーラス解に対する位相縮約法である。また、本手法は回転水槽実験系の進行振動対流に適用可能である。そして、回転水槽実験系は大気大循環の模型実験系であり、回転水槽実験系における同期現象を解析することは、地球流体における同期現象の数理的な理解に資する。 偏微分方程式のリミット・サイクル解に対する位相縮約法を用いて、振動対流など偏微分方程式のリミット・サイクル解として記述されるリズム現象の相互同期に対する最適化手法の開発に成功した。そして、その手法の有効性も確認した。位相縮約法およびそれに基づく最適化手法は、振動現象・同期現象に関係している限り、適用対象には制限がなく、大きな波及効果が期待できる。実際、研究代表者自身らにより、振動対流を記述する流体方程式に加えて、化学系や生物系のリズミックな時空間パターンを記述する反応拡散方程式にも適用した。 鞭毛の振動運動を偏微分方程式のリミット・サイクル解として記述する数理モデルに対する位相縮約法の定式化に成功した。そして、その手法の有効性も確認した。特に、流体力学的に相互作用する一対の鞭毛の間の位相同期ダイナミクスを解明した。加えて、鞭毛の同期現象には鞭毛の根元付近が重要であることを数理的に示した。本成果を一般化することで、海綿動物の襟細胞室における鞭毛集団を記述する位相方程式が導出可能であり、その導出された位相方程式は、海綿動物の水輸送機構を数理的に理解する上で本質的な貢献をすると期待される。また、本成果は、ゾウリムシなどで観察されるメタクロナル波の研究にも応用可能であり、大きな波及効果が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、円柱座標系において速度・圧力変数で表示された3次元回転流体方程式系における進行振動対流の位相縮約法を定式化した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成29年度の研究で構築した手法を適用することにより、周期外力を受けた回転水槽実験系における進行振動対流の強制同期現象および2つの回転水槽の結合系における進行振動対流の間の位相同期現象を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会・研究会での成果発表のための旅費として使用する予定であったが、他の予算から支出したため、次年度使用額が生じた。平成30年度に成果発表のための旅費として使用する計画である。
|
備考 |
「なぜそろう? 大気の対流やカイメンのべん毛運動の同期現象を数理科学で解く。」(取材協力:河村洋史) [Blue Earth 153, 8-9 (2018).]
|