研究課題/領域番号 |
16K17778
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻庭 俊 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (90647380)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 古典分子動力学シミュレーション / リボ核酸 / 力場パラメータ / 自由エネルギー計算 / 修飾核酸 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、分子動力学シミュレーションで修飾入り核酸をシミュレーションするため、力場パラメータと呼ばれる値を決定することにある。リボ核酸は生体内で多くの種類の修飾が入った状態で機能することが知られており、本研究課題ではこれを古典分子動力学でシミュレーションするため、パラメータを決定する。2016年度はイノシン(I)ならびにN6-メチルアデノシン(m6A)と呼ばれる修飾核酸塩基について、分子動力学シミュレーションのための力場パラメータの作成を行った。量子化学計算によって計算されたエネルギーの値を再現するように、修飾核酸塩基の各原子の電荷ならびに核酸-糖の間の結合まわりの二面角の回転に関わるパラメータを決定した。またこの力場決定プロセスを繰り返し行うことに備え、修飾核酸の構造情報を与えると量子化学計算を行い、AMBER分子動力学パッケージ用の力場ファイルを出力する、半自動化されたパイプラインを作成した。 2016年3月末時点で、これら作成した力場を使いシミュレーションを行った場合、シミュレーション結果が実験結果と一致するかを検証している。これは、I / m6Aを含む核酸についてその実験的に知られている構造が正しくシミュレーションで再現されるか、また結合定数の実測値と、同じ塩基配列をシミュレーションし自由エネルギー計算を行った場合の結合定数が一致するか、のそれぞれを検証するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調書での当初計画では初年度に2塩基のパラメータ決定と検証を行う予定であった。しかし予算の削減により、利用可能な計算機の台数が半減したため、交付申請書にて計画を修正し、2016年度はイノシンのみのパラメータ決定を行うことを計画していた。2016年度中にN6-メチルアデノシンの重要性が増したため、計画を変更し2塩基のパラメータ決定を先に行い、検証を後でまとめて行うこととなった。多少の変更はあるものの、交付時の修正計画からは概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に引き続き、イノシン・N6-メチルアデノシンの力場の検証計算を行い、結晶構造などを再現できるかの検証と、熱化学実験の結果との照合を行う。 また、2016年度に作成した力場パラメータ決定パイプラインを活用し、他の修飾核酸塩基であるシュードウリジンなどについても、力場パラメータの決定とその検証を行う。「進捗状況」で示したとおり、予算削減に伴い、当初の計画から縮小して研究を実施している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の大規模計算部分は京都大学の大型計算機の貸与を受けることで遂行していた。2016年度夏に京都大学は大型計算機を更新し、新システムを下半期から利用可能である予定であった。実際にはこの下半期から利用予定であった大型計算機で納入遅延が発生し、3ヶ月後に納入されることとなった。そのため、利用予定であった下半期の計算機利用期間が半減し、利用額も半分となった。その差額がほぼ次年度使用額となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に貸与を受ける計算機のノード数を拡充することでこの差額を利用する予定である。
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