現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度に完成予定であった近紫外超短パルスレーザーが、大幅に目標を更新し10フェムト秒をきるパルス幅のレーザー発生を達成することができた。安定性を含めた改良を進めれば、十分分光に使用できると考えられる。 また同じく開発した超短パルス光源を用いて光駆動プロトンポンプのたんぱく質の分光を行った。試料としてはHaloquadratum walsbyiからのバクテリオロドプシンであるHwBRとHaloarcula marismortuiからのバクテリオロドプシンであるHmBRI及びHmBRIIに対し超高速ダイナミクスを調べた。HwBR試料に対しては野生型、D93N変異体、D104N変異体の比較を行った。D93、D104はプロトン輸送サブチャンネルにおいて各々シッフ塩基プロトンの受容体、供用体を制御するアミノ酸残基であることが知られている。D93からの負電荷が発色団の光異性化に伴う超高速電位変化に影響を与えることが発見された。一方シッフ塩基プロトンの供用体の方は、振動励起状態の熱緩和過程における発色団周辺の水素結合ネットワークの再構成を促進するという結果が示された。 HwBR,HmBRI,HmBRIIの超高速分光の結果からは、HwBR及びHmBRIIにおける細胞膜の細胞外部側における水素結合ネットワークが発色団の光異性化を遅くする結果が発見された。またHwBR及びHmBRIIの細胞内側にある負荷電の螺旋構造が、振動励起状態の熱緩和を早めることが分かった。発見された現象のHwBRのD104N変異体との相似から、シッフ塩基プロトン供用体を不活性にすることで細胞内部側の螺旋構造が正に荷電することを示していると考えられる。 これらの成果はBiophysical Journal, 112, 2503-2519 (2017)に出版された。
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