研究課題/領域番号 |
16K17787
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鎌田 俊一 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (40723474)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 氷衛星 / 粘弾性変形 / 潮汐変形 / 潮汐加熱 |
研究実績の概要 |
土星の氷衛星エンセラダスの熱収支を、粘性緩和の観点から初めて制約した。エンセラダスの南極付近においては、氷地殻は薄く、その下の内部海が分厚くなっていることがカッシーニ探査機による測地探査(地形・重力場)で明らかとなっている。この形状が維持されているということは、潮汐加熱による氷の局所的な融解の時定数が、粘性緩和によって氷地殻が平坦になる時定数と等しいか小さいことを示している。前者は潮汐熱率、後者は温度構造に依存することため、これら時定数の比較からエンセラダスの熱収支を制約できる。本研究においては、平均氷地殻厚、氷地殻の基準粘性率(融点における粘性率)、氷地殻の融点(不純物の濃度に依存)といった不確定性が多い要素についてフリーパラメータとして扱い、非常に広い範囲を探索した。計算結果を現実的な期間で得るために、マルチコアCPUの計算機を複数台、数ヶ月間利用した。計算の結果、現在のエンセラダスにおける潮汐加熱による発熱量が10 GW以上でなければ、二つの時定数が釣り合うことはないということが分かった。この結果は、エンセラダスの内部温度構造に対する示唆だけでなく、土星本体の内部構造についての示唆も与える。なぜならば、エンセラダスのような衛星間軌道共鳴状態にある衛星系においては、潮汐加熱率は惑星の散逸係数で決まるからである。これらの結果、並びに議論は、査読付き国際惑星学雑誌「Icarus」に掲載された。 さらに、木星の衛星ガニメデについても、パラメータスタディを通しての潮汐変形の研究を行い、その内部構造との関連を定量的に明らかにした。その結果は、査読付き国際惑星学雑誌「Journal of Geophysical Research Planets」に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時定数の観点からエンセラダスの熱収支に関する知見や、ガニメデの潮汐変形と内部構造の関連についても知見を得、それら結果を査読付き国際誌に掲載することができた。加えて、内部熱進化を解くための計算スキームの開発も順調であり、学会発表を控えている。以上より、研究は順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
予定通り、内部熱進化を解くための計算スキームの開発を進める。それと同時に、潮汐変形コードの改修と統合を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
トルコ・イスタンブールで開催予定であった国際学会での発表を予定していたが、度重なるテロとクーデター未遂により、学会そのものが中止になってしまった。そのため、その渡航費分が余剰となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度、他の国際学会へ参加し、研究成果を報告する場を設ける。
|