研究実績の概要 |
西南日本やカスカディアの沈み込み帯では、沈み込んだスラブの形状と短期的スロースリップによる平均すべり速度に良い相関があるように見える。本研究では、この観測がスラブの複雑な形状による水の3次元的な移動を反映している可能性を調べることを目的とした。 今年度は、前年度で構築した蛇紋岩内の浸透率の異方性の効果を取り入れた水の移動の数値モデルの改良を行った。具体的には水のより現実的な振る舞いを表現するために、水の移動に伴う岩石の体積変化の効果を考慮した。まずは浸透率を等方的と仮定し、岩石の体積変化の効果を取り入れた水の移動の計算を正しく行えているかを以下のように確認した。(1)1次元の計算領域で計算を行い、得られた結果を既に出版されているベンチマークテストの結果(Simpson and Spiegelman, 2011, J. Sci. Comput.)と比較した。(2)その後モデルを2次元・3次元の計算領域へと拡張し、得られた水の振る舞いが先行研究と調和的であることを確かめた。 その後岩石の体積変化と浸透率の異方性の効果の両方を取り入れた3次元の計算をいくつか行ったが、基本的な水の振る舞いは前年度で得られたものとほぼ同じであった。ただ岩石の体積変化に関する入力パラメータ(体積粘性率と体積弾性率)によっては結果に大きな違いが生じる可能性もあり、それは今後の課題である。 これらの内容の一部を含んだものを国内誌に投稿・受理された。また5月には日本地球惑星科学連合連合大会、10月には日本地震学会秋季大会に参加し、発表を行った。
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