研究課題/領域番号 |
16K17795
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 岳人 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10451874)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摩擦則 / 非線形 / 線形臨界安定性解析 |
研究実績の概要 |
巨視的滑り出しを統一的に取り扱う最も単純化された系として、粘弾性体ブロックの一次元滑りを仮定し、運動方程式を導出した。この際、摩擦則として滑り及び滑り速度に関して多項式で展開したものを考えるのであるが、まずは滑り速度のみに二次で依存する場合を取り扱った。この際伝播速度の解析解を2つ得られたのが大きな成果である。この2つは境界条件によってどちらが現れるかが支配され、通常のブロックの押し込みではそれらのうち小さい方が現れることが分かった。加えて重要なのは、滑り速度として許される範囲によって更に異なる伝播速度が得られるということである。解析計算では滑り速度がある基準値を上回らないと仮定して求めたが、数値計算では基準値よりも速く滑り得るため、先の解析解よりも大きな伝播速度となった。そのようなずれは存在するものの、解析解が十分な目安を与られることも明らかになった。加えて、先程の摩擦則を線形化した際にも同様の伝播速度を得られた。伝播速度が摩擦則の線形部分のみによって支配されていることが明らかになり、これは摩擦則の詳細を知らなくても結果が分かるという点で優れた成果である。滑り及び滑り速度に依存する系の取り扱いの準備段階としては十分な理解が得られた。なお、ここで述べた成果は投稿目前である。 引き続いて滑り・滑り速度依存摩擦則を考えた。ここでは運動方程式は既に得られており、解析手取り扱いもある程度進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、滑り及び滑り速度に依存する系の取り扱いの準備段階としては十分な理解が得られたからである。特に数値計算では解析解で考えていなかった滑り速度が生じ、解析解と異なった伝播速度を生じさせたことは事前には予測できず、興味深いものであった。そしてそのような状況でありながら、解析解が伝播速度の概ねの目安を与えていることもまた重要な発見であった。更に、摩擦則は実は線形部分のみが重要であり、それ以上の細部は伝播速度に影響を与えないことを示した意義も大きい。摩擦則は多様なものが提唱されているものの、その詳細は実は関係しない、ということは非常に一般性のある結果であることを示すからである。 滑り・滑り速度依存摩擦則においても、運動方程式を考えるところまでは到達しているので十分である。この系で特に滑り速度がどのような値をとるのか、これまでの経験を基にすれば注意する必要があると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次の段階の支配方程式(運動方程式)も既に得られているので、基本的にはこれまで通り順調に進められると考えている。特に、パラメータが今後は一つ増えて二つになるので、それらによる相空間で伝播速度を分類することが重要なテーマになる。研究協力者とも十分に意思疎通が図れているので問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿まで至らなかったことが大きな要因である。しかし投稿に近いところまでは到達できた。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の英文校閲料や投稿料として使用される。
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