研究実績の概要 |
地震研究は長らく「地震の特殊性」というものに目を向けてきた。地震ならではの特徴を観測から見出し、それを説明する模型を構築する、というプロセスで進められてきたのである。もちろんそれで問題があるわけではないのだが、自然科学として対象が狭まってしまった傾向も同時に否めない。そこで、地震滑りは断層の「摩擦滑り」である、ということに着目してみる。すなわち、そこには身の回りの物を滑らせた時と同様に現れる普遍性が隠されているはずなのである。本研究ではそこに焦点を当て、摩擦滑り現象一般に適用可能な模型を構築し、地震学的示唆を考察する足掛かりとする。
基板上にブロックを置き、左から加重するという単純なモデルを扱う。ポイントとしては、滑り速度に二次関数で依存する摩擦則の採用、そしてブロックの粘性の導入が挙げられる。加えて線形臨界安定性解析(Linear Marginal Stability Hypothesis, LMSH)もキーワードとして重要である。特に二次関数に摩擦則は、摩擦力の多価性を排除し、解析的取り扱いをし易くする上で重要である。一方で、LMSHによりこの仮定が緩められることもまた明らかになった。なお、解析的手法に加えて数値的手法も用いたが、解析的成果が重要であるため、ここでもそれを重点的に記述する。特に滑り端が伝播する速度を考え、解析的にこの値が得られることを示す。そして境界条件として与える歪みをパラメータとした相転移的振る舞いの存在も明らかにしていく。結果の地震学的考察も行う。
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