研究実績の概要 |
地球外核は液体鉄に10 wt%程度の軽元素、5-15 wt%のニッケルが含有されている。しかし、軽元素の含有が提唱されてから70年近く経過した今も、含有されている軽元素の種類・量ともに明らかにされていない。本課題では外核に相当する高圧下における液体鉄合金のX線全散乱法による密度測定・X線非弾性散乱法による弾性波速度測定を行ってきた。平成29年度は前年度に得られた70万気圧までの結果を踏まえ、100万気圧以上の高圧発生下における液体鉄合金の密度・弾性波速度測定を行うことを目標とした。超高圧下において長時間試料の融解状態を維持することは難しい。また、レーザー加熱による融解の際、レーザーのパワー密度を上げるためレーザースポット径を0.01 mm程度まで集光する必要があり、レーザースポット中心から0.01 mmもずれると温度勾配が顕著に見られ、試料が固化してしまう。短時間で測定を実行するために高フラックスかつ微小径X線の利用が課題となった。そこで平成29年度はX線非弾性散乱法による液体鉄硫黄合金の測定をBL43LXUで2回実施し、従来のBL35XUにおける測定の1/2以下の測定時間を達することができた。その結果、80万気圧、100万気圧での弾性波速度データ取得に成功した。現在データを解析し、国際誌への論文投稿に向けての準備を行っている。密度測定についても100万気圧, 4000 Kにおけるデータ取得を試み、解析中である。今現在70万気圧までの密度データをまとめ、論文を執筆している。密度データ・弾性波速度データは互いに矛盾しなかった。論文中では両測定の結果を踏まえ、地球外核には硫黄が軽元素として含まれている可能性が高いことを示す。
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