研究課題/領域番号 |
16K17801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高麗 正史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80733550)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 対流圏界面逆転層 / 大気重力波 / 半球間結合 / 水蒸気ゾンデ / オゾンゾンデ / 極成層圏雲 |
研究実績の概要 |
南極昭和基地において、オゾンゾンデ・水蒸気ゾンデ観測を実施した。まず、試験観測として4月にオゾンゾンデ・水蒸気ゾンデ連結飛揚を実施した。この連結飛揚は、南極で初めての試みであったが、上昇時・下降時ともにデータを正常に受信することができた。次に、極成層圏雲(PSC)及び対流圏界面の鉛直微細構造を調べるために、7月にオゾンゾンデを14回、水蒸気ゾンデを7回飛揚した。また、7月を含む極夜期は、対流圏界面逆転層(TIL)が消失する時期と対応し、その平衡状態の維持機構を解析する上で今後使用するデータとなる。28年度は衛星ライダーが昭和基地上空を通過した事例を収集し、特に極成層圏雲(PSC)が検出された事例について集中的に解析を進めている。また、TILの回復が見られる11月にオゾンゾンデ飛揚を14回、TILが季節の中で最も強くなる12月にオゾンゾンデ飛揚を14回実施した。これら以外に、16Hzで温度を精密に測定できる気温基準ゾンデを、7月と11月に一度ずつ飛揚した。この高鉛直分解能(~30m)・高精度(~0.01K)データにより、乱流強度の鉛直プロファイルの推定が可能となる。 上記の観測と並行して、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)の3年分の観測結果に基づき、中間圏夏季の循環強度とその下層の重力波強制の関係を定量的に調べた。2015年1月に発生した北半球の成層圏突然昇温に伴い、南極昭和基地上空での平均風及び重力強制の変動が確認された。これは、先行研究で提案されている半球間結合のメカニズムに対して、下層から伝播する重力波の重要性を示す重要な結果といえる。この結果を含む成果は、Journal of Geophysical Research Atmosphere に出版されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた昭和基地でのラジオゾンデ飛揚(オゾンゾンデ・水蒸気ゾンデ・気温基準ゾンデ)を実施することができた。7月の観測の解析を随時進めている。 PANSYレーダーがこれまで蓄積したデータに基づいた、重力波と中間圏循環の統計解析を実施した。結果、半球間結合や大気中の普遍スペクトルについての示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
気温基準ゾンデ、PANSYレーダーのそれぞれから乱流強度を推定し、対流圏から成層圏までの乱流強度の高度プロファイルを得る。また、既存のゾンデ観測に対しても同様に乱流強度推定を実行し、その妥当性を検証する。 2016年11・12月のオゾンゾンデ・水蒸気ゾンデの鉛直プロファイルを単純化された放射モデルに入力することで、これら大気微量成分が南極TILの季節変化に対して果たす役割を定量化する。これと力学過程の寄与を比較し、南極TILの消失・再出現過程を定量的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
PANSYレーダーによる大気重力波の統計解析を通して、北半球成層圏突然昇温時の中間圏応答や大気中の普遍スペクトルについて、重要な示唆を得ることができた。それらの結果をまとめることを優先したため、予定していたラジオゾンデ観測の初期解析結果の論文執筆が今年度中に終えることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昭和基地で実施したオゾンゾンデ・水蒸気ゾンデ観測に基づく解析についての論文の執筆を8月までに終えて、英文校正費、及び、出版費として使用する予定である。
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