研究課題/領域番号 |
16K17801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高麗 正史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80733550)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対流圏界面 / 乱流エネルギー散逸率 / ラジオゾンデ / 大気レーダー |
研究実績の概要 |
本年度は、南極上部対流圏・下部成層圏(UTLS)における乱流エネルギー散逸率の季節依存性、及び対流圏界面高度の変化を記述する方程式の提案・適用を行った。 昨年度までに、南極昭和基地大型大気レーダー (PANSYレーダー) に基づき、南極対流圏・下部成層圏における乱流強度の高度・季節依存性を調べた。結果、5~10月の高度10~15 kmにおいて、乱流エネルギー散逸率が大きくなる傾向が見られた。これは極渦の季節変化が、UTLS領域の乱流の動態に関係していることを示唆している。そこで、渦位に基づく緯度(等価緯度)を用いて、渦位-温位面に射影した乱流エネルギー散逸率を解析した。極夜ジェット付近は、極渦の十分内側に比べて、乱流エネルギー散逸率は大きくなることが分かった。また、この乱流エネルギー散逸率が大きくなる領域と、Richardson数が1未満になる頻度が高くなる領域はよく対応していることを確かめた。乱流エネルギー散逸率と鉛直渦拡散係数が関係していることを考えると、この解析で明らかとなった乱流パラメータの極渦内・縁辺領域の対比は、それらの領域において物質輸送について違いがあることを示唆している。 対流圏界面は、対流圏と成層圏の境界であり、通常、気温減率で定義される。傾圧不安定などの総観規模擾乱や成層圏突然昇温などの惑星規模擾乱に伴い、数日~数ヶ月スケールで変動することが知られている。今回、対流圏界面を温位の鉛直勾配の不連続点として簡単化することにより、対流圏界面高度の時間変化率を診断する式を導出した。さらに、その式を傾圧不安定の数値実験や衛星観測データ、再解析データに適用した。いずれの場合も、今回導出した診断式が機能することが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乱流エネルギー散逸率により、成層圏極渦の特徴づけを行うことができた。大気微量成分物質輸送や鉛直分布の形成要因を調べる上で重要な示唆が得られた。 対流圏界面高度の時間発展についての診断式を導出し、それにより、対流圏界面高度の変動要因について定量的に解析ができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
すでに3年以上のデータ蓄積があり、成層圏・対流圏の諸現象について、乱流パラメータの観点で特徴付を行う。 対流圏界面高度の別の定義(例えば渦位に基づく力学的圏界面)に適用可能な診断式を導出し、南極対流圏界面高度の1年周期の変動要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で得られた研究成果について、2019年7月に開催が予定されている AOGS Annual Meeting (シンガポール) で発表するため。また、その研究成果を論文投稿するため。
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