研究課題/領域番号 |
16K17804
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
横田 祥 気象庁気象研究所, 予報研究部, 研究官 (10723794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 積乱雲 / データ同化 / アンサンブル予報 / 二重偏波レーダー / 赤外線カメラ |
研究実績の概要 |
積乱雲の雲物理量と大気場の関係をデータ同化とアンサンブル予報を用いて明らかにするための準備として、下記の研究を行った。 (1)高解像度アンサンブル予報に基づく解析が適切に行えることを確認するために、2012年5月6日の発達した積乱雲に伴う竜巻について、33メンバーのアンサンブル予報(水平解像度50m)に基づく解析を行った。その結果、竜巻の発生にとって重要な物理量を見出すことができた。 (2)アンサンブル変分法(EnVAR)を用いたデータ同化の際、モデルを繰り返し計算することで解析の精度が上がる可能性を、観測システムシミュレーション実験により見出した。 (3)大雨発生前の大気場(アンサンブル予報の初期値)をレーダー反射強度の同化によってより精度よく求めるために、降水が予測されていない場所に大気場と相関の持つレーダー反射強度のアンサンブル摂動を付加することで、レーダー反射強度をより適切に同化できる手法を考案した。この手法を2012年5月6日の事例に適用したところ、反射強度の同化によって適切に大気場が修正され、降水予報が改善されることが確認できた。 (4)アンサンブル予報から得られる雲物理量と大気場の関係の妥当性を確認するために、赤外線カメラで2016年夏(7~9月)の積乱雲を撮影し、雲の温度の情報を含む観測データを得た。また、この赤外線カメラで近くから撮影できた2016年8月4日の局地的降水事例について、二重偏波レーダーや気象衛星ひまわり8号のデータを取得し、降水やそれをもたらした積乱雲をとらえていることを確認した。 これらの結果については、日本気象学会や米国気象学会の会議等で発表済、または発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大雨発生前の大気場を求めるためのデータ同化手法の改善や高解像度アンサンブル予報を用いた解析の妥当性を、実事例(2012年5月6日の事例)で確認することができた。また、赤外線カメラで積乱雲を撮影し、2016年夏の雲の温度の情報を含むデータを得ることが出来た。特に、2016年8月4日の局地的降水事例については、この赤外線カメラで非常に近くから撮影できており、二重偏波レーダーや気象衛星ひまわり8号のデータも利用できる状態にある。これらのことから、平成28年度の研究計画(データ同化とアンサンブル予報により積乱雲の発生・発達機構を明らかにするための準備)はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2016年8月4日の局地的降水事例を中心に、局所アンサンブル変換カルマンフィルター(LETKF)やアンサンブル変分法(EnVAR)を用いてレーダー観測や地上観測を同化し、そのインパクトを評価する。また、LETKFやEnVARによる解析値を初期値とする水平解像度1km以下のアンサンブル予報を行って局地的大雨を再現し、その結果を用いて積乱雲の雲物理量とその周りの大気場の関係を明らかにする。さらにこの結果を赤外線カメラ・二重偏波レーダー・気象衛星ひまわり8号などの観測データと比較し、アンサンブル予報を用いた解析の妥当性を確認するとともに、積乱雲の発生・発達に重要な大気場の特徴やその予測手法について考察・提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
観測データの容量が想定より小さく、観測データ保存用ストレージの一部が必要なくなった等の理由による。
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次年度使用額の使用計画 |
アンサンブル予報の計算結果のデータを保存するためのストレージの購入費用等に使用する。
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