研究課題
前年度に引き続き、3次元レーダ画像の線形時空間補外予測システムの開発を進めた。フェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)は30秒毎に半径60km圏内の雨雲を3次元的に観測することの出来るレーダであり、急速に発達するゲリラ豪雨のような現象の早期検出に貢献すると期待されている。本研究では、この3次元レーダ画像の時系列を用いて、雨雲の移動ベクトルを計算し、そのまま動いた場合にどうなるかを予測する「降水ナウキャストシステム」を開発している。これまで実際にシステムのリアルタイム運用を行い、スマートフォンアプリへの配信も行ってきた。埼玉大学に設置されたマルチパラメータPAWR (MP-PAWR)を用いて関東平野における降水予測を行うシステムは、前年度よりリアルタイム運用と予測の一般公開を開始していた。今年度も引き続きリアルタイム予測を行うとともに、予測可能性の向上を目指して降雨減衰補正手法の開発を行った。また、前年度に着手した深層学習を用いたナウキャストシステムの開発については、ConvLSTMと呼ばれるニューラルネットワークの一種を改良し、予測精度の向上を行った。降水のマルチスケールな構造を考慮するネットワーク構造および損失関数を考案し、従来手法と比較したところ、精度の向上が見られた。対流スケールの予測可能性を理解する上で重要な概念に、予測誤差分布が正規分布からどの位ずれているかということがある。今年度は他の研究者との連携の下、データ同化の頻度と予報誤差分布の正規分布性の関係について調べた論文の出版に至った。なお、本研究はJST AIP加速課題JPMJCR19U2「ビッグデータ同化とAIによるリアルタイム気象予測の新展開」(代表:三好建正)および宇宙航空研究開発機構・共同研究「GPM観測データ同化による降水予測アルゴリズムの高度化」(代表:三好建正)と密接に連携して実施した。
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Geophysical Research Letters
巻: 49 ページ: in print
Nonlinear Processes in Geophysics
巻: 28 ページ: 615~626
10.5194/npg-28-615-2021