研究課題
本研究では、数10MeVに至る高エネルギー粒子加速を駆動する、木星磁気圏の電磁エネルギー解放・輸送過程の解明を最終目的とする。研究代表者は、惑星分光観測衛星「ひさき」とハッブル宇宙望遠鏡による連携観測を初めて実施し、木星の高速自転と衛星イオのプラズマ供給が自励的に駆動する、内部駆動形の突発的オーロラ加速を発見した。本研究では、2016年に観測開始する木星極域探査機Junoを新たに加え、世界初の遠隔-極域その場同時連携観測から、内部駆動型の粒子加速で鍵となる①自励的エネルギー解放と、②木星近傍へのエネルギー輸送過程を解明し、内部駆動形粒子加速の存在を実証する。実施計画に則り、平成28度はひさきの観測に基づき、自励的エネルギー解放の素過程と見られる、磁気再結合の発生と、それを制御しうるイオからの質量供給の定量的関連付けを試みた。イオで大規模な火山活動が発生していた時期に、6ヶ月以上に渡り実施した、木星オーロラの長期連続監視から、突発的オーロラを約50例同定した。イオから供給されるプラズマが最も濃密に滞留する、イオプラズマトーラスの紫外線発光を同時に監視することで、イオからのプラズマ供給率の見積もりを試みた。この見積もりに際して、プラズマトーラス中の交換型不安定等を仮定し、紫外線発光から、プラズマ供給率を定量的に導出する解析モデルを開発した。このモデルによって見積もったプラズマ供給率と、オーロラ突発増光の出現頻度を比較した結果、イオから供給されるプラズマ質量の累積が、木星磁気圏の総質量に到達した時、初めて突発増光が頻発することが明らかになった。これは、仮に突発増光が磁気再結合に対応すると仮定すると、それらが発生するためには、定常状態の磁気圏に対して有意な「質量超過」が必要であることを示唆している。この結果は現在国際誌への投稿に向けて論文を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に則り内容を達成できたため。
今後は、2016年5月―8月に実施した、ひさき-ハッブル宇宙望遠鏡-Juno探査機の三者連携観測や、それ以降に実施している、Junoの極域その場観測などの多様なデータを統合し、自励的エネルギー解放や、磁気圏内の巨視的なエネルギー輸送の素過程を明らかにしていく予定である。
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