研究課題/領域番号 |
16K17814
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
横山 竜宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 主任研究員 (30397525)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電離圏 / プラズマバブル / シミュレーション / シンチレーション |
研究実績の概要 |
低緯度電離圏において発生するプラズマバブルと呼ばれる現象は、局所的なプラズマ密度の不規則構造を伴うため、衛星から送信される電波の振幅、位相の急激な変動(シンチレーション)が生じ、GPS等による電子航法に障害を及ぼすことが知られている。このような電離圏擾乱の発生機構を解明し、発生を事前に予測することが科学・実用の両面から求められている。 本年度は、シミュレーションモデルの高解像度化をさらに進めるため、最も計算コストの高い分極電場の計算アルゴリズムのさらなる高速化を行った。最新の反復計算アルゴリズムと前処理技法を組み合わせることで、収束に至るまでの時間を大幅に短縮することに成功した。さらに、大型計算機の使用ノード数を大幅に増やすことでより大規模な計算が可能となった。これにより、水平、鉛直方向にそれぞれ200m程度の解像度での計算が可能となり、GPSシンチレーションの直接の原因となる不規則構造のスケール(300-400m)を直接再現できることがほぼ確実な状況となった。一方、シミュレーション結果とレーダー観測を定量的に比較し、再現されたプラズマバブルの成長速度が観測結果とよく一致することが示された。観測結果から見積もられる成長速度は非常に幅広い値を取ることから、様々な条件下でプラズマバブルが発生している可能性が示唆された。 また、上記の成果を含めた総説論文をオープンアクセス誌(PEPS)に出版し、昨年度に出版した総説論文が、Space Science Series of ISSI vol. 60に収録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究から、シミュレーション結果を用いた衛星電波のシンチレーションの定量的な評価を行うためには、より高解像度の計算を行う必要性があることが分かった。平成29年度はその高解像度化に注力し、より現実に近いプラズマ密度の不規則構造を再現することに成功した。赤道域における電離圏擾乱の影響の評価についてはほぼ達成の見込みがついているが、本研究の最終目的と設定した赤道-中緯度間結合には未だ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
計算アルゴリズムの高速化と空間解像度の向上については、現状のモデルでほぼ完成形に近い状態となった。今後は、高解像度のシミュレーション結果を利用した、赤道域における電離圏擾乱の定量的な評価を行い、その後中緯度域との結合へと発展させる計画であるが、赤道域におけるシミュレーション結果は学会等でも評価が高く、赤道域におけるさらなる研究成果が非常に望まれていることから、中緯度域への影響については当初の計画よりは簡略化した手法で進める可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
オープンアクセス誌に出版した総説論文の投稿費が免除となったこと、他予算からの国外旅費支出等により、次年度使用額が生じた。翌年度は複数の国際学会発表を予定しており、また計算機使用料の支出も見込まれることから、執行に問題はないと考える。
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