研究実績の概要 |
低緯度電離圏において発生するプラズマバブルと呼ばれる現象は、局所的なプラズマ密度の不規則構造を伴うため、衛星から送信される電波の振幅、位相の急激な変動(シンチレーション)が生じ、GPS等による電子航法に障害を及ぼすことが知られている。このような電離圏擾乱の発生機構を解明し、発生を事前に予測することが科学・実用の両面から求められている。しかし、その発生原因については、未だ解明されておらず、現状では予測が非常に困難な状況である。本年度は、プラズマバブル発生の日々変動の一因と考えられている熱圏中の鉛直風の影響について研究を継続し、数m/s程度の鉛直風が、プラズマバブルを発生させることが可能であることが示した。研究成果は、Geophys. Res. Lett.誌に掲載され、プラズマバブルの生成機構の新たな機構として受け入れられた(Yokoyama et al., 2019)。また、シミュレーション計算領域を拡張し、より高高度、高緯度までプラズマバブルの影響を調査できるように改良を行った。強い外部電場を与えると、プラズマバブルが高度1500km程度にまで到達することが確認されたが、日本の緯度付近にまで到達する様子は確認できなかった。何らかのその他の要因が寄与していることが示唆された。一方、中緯度における電離圏擾乱については、大気光観測から得られた結果をシミュレーションで再現し、大気光の増光現象も電離圏E-F領域間結合で説明可能であることを示した。この成果は、J. Geophs. Res.誌に掲載された(Martinis et al., 2019)。低緯度、中緯度電離圏のシミュレーション結果は、それぞれ世界最大級のAmerican Geophysical Union Fall Meetingにおいて招待講演として発表し、その他の学会等においても複数の招待、一般講演を行った。
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