研究実績の概要 |
徳島県牟岐町の沿岸湿地で発見した古津波堆積物に関する結果を論文として投稿し,学会で公表した.また,三重県志摩半島で人力掘削調査,地形測量等を行った結果,津波堆積物を新たに発見した.この調査地は安政東海地震津波(1854年)で浸水したことが知られている.3-5枚の砂礫層が見つかり海生生物の遺骸を含んでいることや,側方によく連続すること,現成の津波堆積物と共通する堆積学的特徴を持つことなどから津波堆積物であると解釈した.種や葉などの測定対象物を選定し放射性炭素年代測定を行った結果,これらの津波堆積物が堆積したのは約5,500ー4,000年前であることが分かった.津波堆積物の一つは現在の海岸線から150 m程度内陸まで分布していた. 志摩半島ではこれまでにも津波堆積物の研究が行われており,約4,000ー500年前の津波堆積物が報告されている.今回新たに見つかった津波堆積物の一部は既存研究で報告されていた津波堆積物と対比される可能性が高く,志摩半島に広く影響を及ぼした津波であることを示している.また,志摩半島で新たに見つかった津波堆積物と,2018年度までに牟岐町で見つけていた津波堆積物の年代は多くが重複しており,両地域における複数の津波堆積物を対比できる可能性がある.いわゆる南海地域(牟岐町)と東南海地域(志摩半島)における津波痕跡が対比される場合には,両地域にまたがる巨大地震を示している可能性もあるため.今後慎重に検討することが必要である.
|