研究課題/領域番号 |
16K17821
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
齊藤 哲 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (00528052)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大陸地殻形成 / 海洋性島弧 / 花崗岩 / 伊豆衝突帯 |
研究実績の概要 |
花崗岩類は大陸地殻の主要構成岩石であり、花崗岩質地殻を有する海洋性島弧は初期的な大陸地殻が海洋域において形成する場であると考えられている。しかしながら、海洋性島弧で形成する花崗岩類は不適合元素に乏しく、大陸地殻を特徴付ける不適合元素に富む花崗岩類とは組成が大きく異なる。一方で、海洋性島弧の衝突帯である伊豆衝突帯には大陸地殻を特徴付ける不適合元素に富む花崗岩類が形成しており、衝突帯深部地殻の溶融作用が海洋性島弧の成熟と大陸地殻への進化に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究の目的は、伊豆衝突帯における地殻の溶融作用と多様な花崗岩類の成因について、特に高温高圧実験により詳細に解析することである。 この目的の達成のために、平成28年度はピストンシリンダー型高温発生装置を用いた伊豆衝突帯地殻岩石の溶融実験を行った。伊豆衝突帯深部地殻構成岩石は、(1)本州弧四万十帯変成堆積岩、(2)伊豆小笠原弧火山フロント側玄武岩質岩、(3)伊豆小笠原弧背弧側玄武岩質岩、の3つの端成分が様々な割合で混合したものと想定される。このうち、当該年度は(1)と(2)および両者を1:1の割合で混ぜ合わせた混合物の溶融実験を行った。実験により生成した溶融ガラスについて化学組成分析を行った結果、実験出発物の(2)の割合が大きくなるにつれて、不適合元素(カリウム)含有量が大きなる傾向が認められた。この結果から、大陸地殻を特徴づける不適合元素に富む花崗岩質マグマの形成には、マグマソースとなった深部地殻への成熟島弧地殻岩石の混入が重要である事が示唆されるが、今後は実験出発物質(1)と(2)混合量比や実験温度条件を変えて実験を行い、溶融ガラスの組成変化について定量的な検討を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目には、出発物質として上記(1)と(2)を用いた高温高圧実験を行う予定であったが、それに加え両者の混合物を用いた実験も行い新しい知見を得ることができたため、研究は概ね順調に進捗しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高温高圧実験出発物質として上記の(1)と(2)混合量比を変えて実験を行い、解析を進めて行く。また、上記(3)にあたる試料を野外調査により入手し、その溶融実験を行い解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より物品費および人件費・謝金については使用額が大きくなったが、旅費およびその他の使用額がそれ以上に少額であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
高温高圧実験の消耗品の購入費用や成果発表のための移動旅費などに、翌年度分の助成金とあわせて使用する。
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