研究課題
本年度も引き続き,高知県北部の御荷鉾-秩父帯北帯(ジュラ紀~前期白亜紀付加体)の野外調査を行った.これらを北から御荷鉾ユニット,赤良木ユニット,上穴内ユニット,西又ユニット,赤塚山ユニットの5ユニットに区分し,北方のユニットほど構造的下位で付加年代が若くなる付加体構造を明らかにした.また,変成温度-圧力も構造的下位に向かって単調に上昇することを明らかにした.変成温度は炭質物ラマン温度計により推定した.変成圧力は緑色岩の鉱物組合せや鉱物組成をもとに定量的に見積もることができた.本研究により付加体の低温変成作用であっても,岩石学的手法が有用であることが示された.また,上穴内ユニットと西又ユニットの境界は変成度のギャップをもつ大規模正断層であることを明らかにした.秩父帯北帯の付加体において,推定した圧力差から想定される鉛直距離に比べて,現在の地質体は著しく薄化している.これらの構造は底付により肥厚化した付加体が,伸長テクトニクスにより薄化し,深部岩石を上昇させたことを示す.以上の成果をJournal of Metamorphic Geologyに公表した.また,西又ユニットの緑色岩に伴われるFe-Mn鉱床の鉱物学的検討も行った結果,ilvaite-manganilvaite系鉱物を見出した.Ilvaiteの安定性について検討を行い,赤鉄鉱+ilvaite共生が変成条件を制約する重要な指標になることと,石英+ilvaite共生に従来の想定されていた低圧限界が存在しないことを明らかにした.三波川帯低変成度部の苦鉄質岩の原岩についても検討を行い,これまで知られていなかったアルカリ玄武岩(海洋島玄武岩)が普遍的に存在することを明らかにした.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)
Journal of Metamorphic Geology
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