研究実績の概要 |
長い時間軸上の生態系進化を考える場合,これまで一次生産者が特に注目されてきた.一方,この研究は,生態系の頂点に注目する.現在までの2.5 億年間,魚竜から鯨類まで,頂点捕食者はそれぞれに絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期には頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因は不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石等を精査することによって,頂点捕食者と鞘形類(イカ・タコ類)の捕食被食関係を基にした共 進化史を解明することを目的としている.
今年度は,日本の上部白亜系と中国の三畳系を対象に野外調査,標本の採集調査,各研究施設に収蔵されている標本調査を行なった.日本の上部白亜系については,北西太平洋地域で地層の連続性と化石の保存性に優れる北海道の蝦夷層群を中心に中川町,小平町,苫前町,羽幌町,夕張市,むかわ町での広域的な調査を行なった.調査の結果,自ら採集した標本に加え,複数の未記載重要標本を得ることができた.室内では,これらの標本の抽出作業を行い分類学的検討を行なった.この結果,高次分類レベルにおいて,海棲爬虫類と頭足類の捕食被食関係を明確にすることができた.中国南部に分布する三畳系~ジュラ系についても同様の分析を行なった.さらに,中生代を通した鞘形類の多様性変動復元のためのデータベースの基礎となるデータを文献データと自らのデータをあわせて収集し,解析予備段階まで到達することができた.
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