研究課題/領域番号 |
16K17828
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西岡 佑一郎 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00722729)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 偶蹄類 / ウシ科 / 東南アジア / ミャンマー / タイ / 新生代 / 進化 |
研究実績の概要 |
(1)タイのスコータイ自然史博物館に所蔵されているミャンマーのイラワジ層産ウシ科頭骨化石のクリーニング作業を進め,種分類に必要な形態データの収集とレプリカの作成を行った.形態比較の結果,本標本は初期のウシ族であるSelenoportax falconeriに分類された.S. falconeriは南アジア(シワリク層)で後期中新世前期(約9Ma)に出現した種であるが,昨年度までに行ってきたミャンマー中部の発掘調査の成果と合わせると,ミャンマーでは本種が後期中新世後期(約6~4Ma)まで残存していたことが明らかになった.これは後期中新世における南アジアと東南アジアの動物相の交流を示す一方で,ウシ族の進化史(出現時期)が地域で異なっていたことを示唆する. (2)タイのナコンラチャシマ市ターチャン採砂場に分布する新第三系を地質調査し,産出した哺乳類化石の同定とその産出層準を記録した.このうち,新たに発見されたウシ科化石からデータを収集し,標本の記載を進めた. (3)パリ自然史博物館(フランス)とバーゼル自然史博物館(スイス)に所蔵されているヨーロッパ産のウシ科化石を観察し,東南アジアの化石種と比較した.ミャンマーからはヤギ亜科に属する角化石が1点発見されており,これが地中海・黒海沿岸域の後期中新世ピケルミ動物群に含まれるPalaeoreas lindermayeriと類似していた.しかし,ミャンマーやタイから発見された哺乳類化石群集の大半を占めるウシ族はヨーロッパの種と異なっていたことから,アジア南部の新第三紀ウシ族はこの地域でのみ種分化したことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミャンマーとタイのウシ科化石について標本整理と同定は終了し記載分類を進めている.年度内にそれぞれの成果を原著論文として公表する予定だったが,執筆が遅れている.ミャンマーのウシ科化石に関する論文は総説(邦文)が1報受理済み,原著論文(国際誌)が現在査読中,タイのウシ科化石に関する論文(2報)は投稿準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在投稿準備中の記載論文の執筆を優先する. (2)東南アジアのウシ族頭骨化石を用いた系統解析を行い,形態観察から得た結論との正誤性を確認する. (3)東南アジアのウシ族臼歯化石を用いた食性推定(メソウェア解析・安定同位体分析)を行い(共同研究),系統解析の結果に対応づけて種の放散と草原適応の検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の消費が当初の計画よりも少なかった.次年度使用額は翌年度分の消耗品費に加える.
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