研究課題/領域番号 |
16K17828
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西岡 佑一郎 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00722729)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウシ / 東南アジア / ミャンマー / タイ / 新第三紀 / 種分化 / 固有種 |
研究実績の概要 |
(1)ミャンマー中部イラワジ層(後期中新世~鮮新世)から産出したウシ科の頭骨・遊離歯化石(計899標本)から形態データを収集し,ヤギ亜科1種とウシ亜科7種を記載分類した.このうちウシ族は,イェナンジャウン地域(後期中新世前半の産地)からSelenoportax vexillarius,チャインザウック地域(後期中新世末または前期鮮新世)からS. vexillarius,S. falconeri,Pachyportax latidens,Pa. giganteus,Proleptobos birmanicus,グウェビン地域(後期鮮新世)からPr. birmanicusが発見された.Pr. birmanicusはイラワジ層の固有種で,その他は南アジアのシワリク層から発見されている種と共通していることから,イラワジ層の化石哺乳類相は後期中新世前半から後半の間にシワリク層の化石哺乳類相との交流が低下した可能性が示唆された(国際誌「Palaeontographica A」と和文誌「化石」に掲載). (2)ザイカバー博物館(ヤンゴン)に所蔵されているイラワジ層産ウシ科を整理・同定し,主にテビンガン地域(後期中新世前半の産地)から採取されたSelenoportax属とPachyportax属の角および遊離歯化石の予備的観察をおこなった.両属は角の形状や歯のサイズに基づき分類されてきたが,定量比較の結果,個体(種内)変異と種間差の境界が曖昧であることがわかった. (3)タイ北東部ターチャン採砂場から発見されたウシ亜科頭骨化石をDuboisia aff. santengとして記載分類した.本属種は基本的にジャワ島の更新世堆積物からのみ報告されてきたが,東南アジア大陸部に同型の種が分布していたことが明らかになった(国際誌「Fossil Record」に掲載).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イラワジ層のウシ科化石群集のうちSelenoportax属とPachyportax属を従来の分類体系ならびに種判別の方法に従い4種に分類した.しかし今年度実施したザイカバー博物館での予備調査の結果,各種の種内変異の幅が大きいことがわかり,種間差の再定義と系統関係の再検討が必要となった.
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今後の研究の推進方策 |
ザイカバー博物館のSelenoportax属,Pachyportax属の角化石を用いて線形計測と3次元形状測定を試み,多変量解析と統計処理に基づいて種内変異および種間差を定義する.得られた結果をタイの新第三紀化石産地から発見されたウシ族化石群集の分類に適用し,東南アジアの新第三紀ウシ族各種の系統関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究結果により海外機関での追加資料の収集が必要となったが,年度内に実施できなかったため事業期間を延長し次年度使用額とした.当該助成金はミャンマー(ザイカバー博物館)への調査渡航旅費(1回)と資料収集にかかる消耗品費に当てる.
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