研究課題
本年度は、ミャンマー中部イラワジ層の化石発掘調査とウシ族の角化石の形態分析に必要なデータの収集を実施するとともに、タイ産ウシ族化石に関する研究成果を公表した。ミャンマーでは、グウェビン地域で哺乳類化石を発掘して標本整理を行った。また、テビンガン地域から採取されたウシ科化石(計130点)を同定し、角の基部断面形状の質的・量的データを収集した。さらに、ザイカバー博物館に収蔵されているウシ族(SelenoportaxとPachyportax)の角化石を用いて、基部断面形状のデータを収集した。これらミャンマー調査で得たデータは、Selenoportax、Pachyportaxに含まれる全4種の識別と分類学的再検討を行うため解析中である。本研究課題は、後期中新世から鮮新世にかけて起きた乾燥化に伴って、東南アジアでウシ族の多様化と爆発的な放散が生じた可能性を検証するものであり、ミャンマーとタイを調査地として、新第三紀ウシ科化石の記載分類と系統解析を進めてきた。ミャンマーでは、3つに時代区分された哺乳類化石群集(後期中新世前期、後期中新世後期~前期鮮新世、後期鮮新世)を、タイでは後期中新世前期の化石群集を対象に、ウシ族化石の種構成と形態がどのように変遷したかを化石記録から追跡した。その結果、後期中新世前期(約900万~800万年前)には南アジア(シワリク層)と東南アジアに同種類が分布していたことがわかったが、後期中新世後期(約600万~400万年前)になるとウシ族の種類と個体数が急増するとともに、インドシナ地域の固有種が出現したことが明らかになった。これは草原環境の拡大に伴ってウシ科が多様化したことを示す直接的な化石証拠である。また、ウシ科化石の対比から、後期中新世末頃に南アジアと東南アジアの動物相が一部隔離され、それぞれ独自の進化史を辿った可能性が示唆された。
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The Thailand Natural History Museum Journal
巻: 印刷中 ページ: -
Historical Biology
10.1080/08912963.2020.1723578
哺乳類科学
Palaeontographica A
巻: 314 ページ: 11-68
10.1127/pala/2019/0088