研究課題
今年度は,5 月に中国遼寧省の炭鉱における化石発掘調査を 1 週間程度おこなった.中国政府によるコントロールの影響で,通年で採掘をおこなっている小炭鉱がほとんどなくなり,冬季のみの採掘になっているため,採掘終了からできるだけ早い時期に調査をおこなうのが目的であったが,炭鉱の状況は必ずしも思わしくはなかった.それでも哺乳類化石を 4 点採集できた.またその他に小型爬虫類等も数点採集した.前期白亜紀の哺乳類化石発掘としては,上出来であると言って良い.その他,5 月の発掘調査後と 10 月に中国科学院古脊椎動物與古人類研究所において,標本観察をおこなった.また,これまでクリーニングされていなかった標本を確認し,比較的保存の良い標本を中心にクリーニングを依頼した.近年の調査で採集できる標本は多くないが,上記以外にもクリーニングされていない標本が多くあり,研究には全く支障はない.クリーニングを依頼中の標本については,クリーニングが終われば研究を進めることができる.真獣類については,私が調査をおこなっている層より 1947 年に記載された種について再検討する論文を国際誌に投稿し受理された (現在印刷中; 第一著者が中国人研究者となっているのは,事前に打ち合わせで真獣類に関する論文の第一著者は中国人研究者とすることを決めているため).この論文が受理されたことで,私たちが採集した真獣類標本についての研究を進める準備が完了した.現在すでに分類学的検討を進めている.また真獣類以外の複数の分類群についても,現在論文を執筆中で,来年度中には投稿ができると思われる.
2: おおむね順調に進展している
本研究はで重点をおいている (1) 標本の収集,(2) 標本の観察と分類学的検討,(3) 他産地・地域の既存の標本との比較のうち,(1) と (2) については今年度も順調におこなうことができた.(3) については,今年度は時間がとれずおこなえなかったが,研究を進める上では全く支障はない.また,論文を 1 篇国際誌に投稿し受理された.現在準備中の論文も近いうちに投稿できる予定である.
3 年目以降は上述の 3 点のうち,特に (2) 標本の観察と分類学的検討に最も重点をおいて研究を進める予定である.標本収集のための発掘調査については,炭鉱の状況を確認してからおこなうかどうかを決定する.別の産地開拓も引き続き中国側と検討中である.炭鉱の状況その他により仮に発掘調査がおこなえなくても,これまでの調査で得られた標本は多いため,研究への影響はほぼないと言って良い. 時間と機会があれば,(3) 他産地・地域の既存の標本との比較のため,海外の機関を訪れたいと考えている.
物品費として予定していたものに,わずかに剰余が生じた.次年度の物品費あるいは旅費として使用予定である.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Vertebrata PalAsiatica
巻: 56 ページ: 180-192
10.19615/j.cnki.1000-3118.180226