研究課題
今年度は,調査可能時期に炭鉱が稼働していなかったため,発掘調査はおこなえなかった.炭鉱が稼働していないのは近年中国政府が石炭使用を抑えていることが原因で,ある程度予期していた通りである.その代わり,8 月から 9 月にかけて 1 か月半ほど中国科学院古脊椎動物與古人類研究所を訪問し,これまでに採集していた標本の整理・観察をおこなった.これまでの観察結果と総合し,採集した哺乳類化石の中に,多丘歯類と真三錐歯類の新種や,既知の種のものと思われるがこれまでに見つかっていなかった部位の標本が含まれていることがわかったため,それらに関する 2 篇の論文を執筆し,投稿した.これらの論文に関しては現在一回目の査読後の修正中であるが,2 篇とも受理される可能性が高い.また真獣類化石についても論文の作成を開始した.真獣類は標本点数が多く,また種数も少なくなさそうなので,段階的な投稿を予定しており,まずは次年度中に一部の標本に関する記載論文を投稿することを目標としている.さらに整理してクリーニングにまわした標本の中に,ほぼ完全なスパラコテリウム類の下顎が含まれていることがわかったので,その標本に関する研究も開始した.
2: おおむね順調に進展している
本研究はで重点をおいている (1) 標本の収集,(2) 標本の観察と分類学的検討,(3) 他産地・地域の既存の標本との比較のうち,(2) については今年度も順調におこなうことができた.(1) については,化石産地の状況が悪化したためにおこなえなかったが,これは想定内であり,これまでに採集した標本が多数あるため,研究遂行上,何ら問題はない.(3) については,今年度も時間がとれなかったが,これについても研究上問題なく,論文を投稿することができている.
最終年度も,特に標本の観察と分類学的検討に重点をおいて研究を進める予定である.標本収集のための発掘調査については,炭鉱の状況の確認が必要し,可能であれば行う予定だが,ここ数年の状況から考えると,状況が改善される可能性はあまり期待できない.しかしながら研究に十分な標本数はすでに採集できているので,これまでに採集した標本を中心に研究を進め,早期の論文投稿を目指したい.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Vertebrata PalAsiatica
巻: 56 ページ: 180-192
10.19615/j.cnki.1000-3118.180226