最終年度も調査可能時期に炭鉱が稼働していなかったため,発掘調査はおこなえなかった (ただし,昨年度の状況からある程度予期されたことだったので,研究遂行には大きな影響はなかった).そこで 9 月の 3 週間ほどの中国渡航をすべて中国科学院古脊椎動物與古人類研究所における既存標本の整理・観察と論文執筆準備にあてた.特に重点を置いたのが真獣類標本で,一部の標本については記載論文の粗稿までは準備が進んでいる.本来であれば年度末に再渡航し,SEM写真撮影等をおこなって論文原稿を完成させる予定であったが,新型コロナウィルスの関係で渡航ができなかったため,状況改善次第再開予定である.昨年度投稿した論文 2 篇はすでに受理されてオンライン公開されている.昨年度から開始しているスパラコテリウム類化石に関する観察や分類学的検討も進められた. また,日本国内でも新たな標本が見つかったため (詳細は現時点では公開できない),その標本に関する研究にも着手した. 研究期間全体では,昨今の炭鉱状況を考えると,最初の 2 年で発掘調査がおこなえたことは幸運であった.採集できた標本は,先の研究課題時までのものと比べると,多くはないが,発掘調査が全くできなくなる前にできるだけの標本を採集するというのも,本研究課題の目標だったので,その目標は達成できている.またこれまでに採集した標本を再度整理し直したことで,改めて重要な標本に気づくことができた (発掘時は標本の一部しか見えていないことが多いので,当初は重要性に気づいていなかった標本が少なからずあった).期間中に論文 3 篇を海外の学術誌に投稿し公表した.また,現在執筆中の論文や,執筆準備中の論文など,本研究課題の成果はさらに数篇の論文として公表できる予定である.
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