研究実績の概要 |
マントルウェッジでのマントルプロセスを経験していると思われる,複数の地点から採取したかんらん岩試料に対して記載岩石学的・地球化学的な解析をおこなっている.特に,強い変形作用を被っているかんらん岩が交代作用を引き起こした流体/メルトの通り道となっている可能性について検証を進めている. 2020年度はイタリアのフィネロ岩体から採取したかんらん岩試料について偏光顕微鏡下での薄片観察,全岩での主要元素および微量元素組成測定をおこない,細粒部と粗粒部での岩石学的特徴の差異について検討をおこなった.かんらん岩の細粒部の全岩主要元素組成は粗粒部と比較してCaOやAl2O3, K2Oに富み,MgOとFeOに乏しいことから,金雲母や角閃石,直方輝石などが多く存在していると考えられる.この特徴は,かんらん石を直方輝石や金雲母および角閃石などが置換していることが偏光顕微鏡での観察により確認されたことと調和的である.一方で,全岩での微量元素組成には大きな差異が認められるものと認められないものの両者が存在する.また,粗粒部には僅かに観察されるのみである硫化物が多量に存在していることが確認されている.これらの特徴に加え,二次的に形成されたと考えられる鉱物(直方輝石,角閃石,金雲母)の主要元素および微量元素組成の変化についても検討を進めているところである. また,北極圏ウラル地域のライイズ岩体の変成かんらん岩についても継続的にその成因について検討を進めている. その他の成果としては,島弧由来のかんらん岩体に記録された現象として脱硫化により形成された鉱物の記載(Arai et al., 2020, Minerals)や,蛇紋岩メランジ中の変成かんらん岩や泥質片岩中に発見したマイクロダイヤモンドの記載(Nishiyama et al. 2020, Scientific Reports)をおこなった.
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