研究課題
変成岩中の流体包有物を用いて、地下深部岩石が辿った履歴を研究する手法の開発をすべく研究を展開してきた。2019年度は前年度から引き続き集束イオンビームを用いた流体包有物の化学組成の測定に注目して、開発手法の論文化の為の基礎データ取得を行った。特に、流体包有物の凍結分析を定量的に行うために必要となる標準試料を作製するため、包有物の水熱合成実験を東北大学で、合成した包有物の融点測定実験を京都大学で実施した。包有物の合成実験によって得られた試料は、集束イオンビームを用いての実分析作業に堪えるものであることがわかり、~10μm程度の包有物を切り出して凍結分析する際の標準試料作製に成功したと言える。合成した包有物の分析を行った結果、本研究で実施している凍結分析は流体中の溶存元素の比を定量的に測定出来ていることが分かった。この結果により、本研究では変成岩中に少量見られる流体包有物に対して、1つ1つの包有物に対して狙いを定めて分析を実施する手法の開発が出来たと言える。研究期間全体を通して、本研究では微少な流体包有物の1つ1つを区別して分析する手法の重要性に注目し、手法の開発と天然試料への適用を行ってきた。特にYoshida et al. (2018 Geochem.J.)ではキルギスの超高圧変成岩中の包有物の化学組成を調べることで、従来重要視されてこなかった流体中のCaやKが岩体上昇期に活動する流体に含まれていることを示した。岩石組織観察と包有物の個別分析は切っても切れない関係があり、今後の研究手法として標準的になる手法の提案が出来たと言える。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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