研究課題/領域番号 |
16K17837
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
川崎 教行 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50770278)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 隕石 / 難揮発性包有物 / Al-Mg年代 / 初期太陽系円盤 |
研究実績の概要 |
本研究は,隕石中の難揮発性包有物CAIの形成年代を精密に測定し,初期太陽系円盤の高温環境における,CAIダスト凝縮プロセスの継続期間を明らかにすることを目的としている。CAIの年代測定には,最も高精度に初期太陽系物質の形成年代を求めることが可能なAl-Mg系を用いる。本年度は以下の研究成果が得られた。 1. 走査電子顕微鏡を用いた観察により,炭素質コンドライト隕石から,初期太陽系円盤のガスから直接凝縮した後,溶融を経験していない特徴を示すCAIを二つ発見した。それら二つのCAIの岩石鉱物学的記載を行った。 2. 凝縮した後溶融を経験していないCAIは,その構成鉱物サイズが微小であり,従来は年代の測定が困難であった。そこで,一次イオンビームの絞り穴の微小化を始めとした各種分析条件の最適化により,二次イオン質量分析法によるMg同位体分析の空間分解能を改善させた。例えば,空間分解能20 umであったスピネルでは約9 um,30から40 umであったメリライトでは15から20 umにまで空間分解能が改善された。これによりAl-Mg系による年代測定が,目的のCAIに適用可能となった。 3. 二つのCAIのAl-Mg年代の測定に成功した。一方は太陽系誕生時(±5万年)に形成,他方は太陽系誕生から18±3万年に形成したことがわかった。本結果は,初期太陽系の高温環境下におけるCAIダスト凝縮が,太陽系誕生時から,少なくとも約18万年間起きていたことを示す。最近の研究により,CAIは太陽系誕生時から約20万年間,初期太陽系円盤内で再加熱され溶融していたことが明らかとなった。この約20万年という期間は,本研究で求められたCAIダスト凝縮の継続期間(18±3万年)と調和的である。以上により初期太陽系円盤においてダスト凝縮プロセスと溶融プロセスが同時期に起きていたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた分析法の改善とCAIの年代測定がすでに完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
初期太陽系円盤におけるガスとダストの化学的分別に制約を与えるために,二つのCAI形成時の初生マグネシウム同位体比を精密に求め,形成年代と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
合算して使用する。
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