ヘリコンプラズマを利用した高周波プラズマスラスターは、高い電離度からアンテナ直下の中心軸付近で中性粒子が枯渇し、このため性能が制限される問題が報告されている。これに加え、放電管壁のプラズマによる損傷や、推力、比推力、推力電力比が未だ実用に足りない問題も抱えている。本研究では中心軸に積極的に中性粒子を供給する燃料供給法を開発し、電子密度の向上や放電管壁への熱負荷軽減を通して性能向上を狙うものである。ラバールノズルを用いた超音速ガスパフによって得られる収束度の高い中性粒子ガスビームによるプラズマ中心軸への燃料供給を提案し、これの実験環境の構築と推力向上の評価を行った。 1年目は超音速ガスパフによる中性粒子ビームの生成実験とビーム評価のための計測器を開発した。ラバールノズルはロケットエンジンなどでよく使用される機器だが、本研究のように高真空下で微小なガス量を噴射する例は少なく、また、中性粒子ビームの空間粒子密度分布の定量的な計測例も無い。このため、放電加工によって製作した各種スロート径の微小径ラバールノズル(最小スロート径0.1 mm)の製作や小型電離真空計や小型ピラニゲージの開発を行い、評価環境を構築した。この結果、均一拡散の発散角と比較して細い収束ガスビームが得られるノズルの開発に成功した。 2年目は中性粒子のプラズマ中心軸供給の実証実験として、中心部に挿入した細径石英管による直接ガス供給によるプラズマ生成実験を実施した。従来の放電管上流壁からの均一供給と比較してアンテナ下流かつ磁場発散部に直接ガス供給を行った場合で1.5倍程度の推力増加が確認された 3年目はラバールノズルによる超音速ガスパフを用いたプラズマ実験を実施した。直接ガス供給の場合と同じく従来供給と比較して下流での電子密度および推力の増加傾向が確認され、本スキームの実効性を実証することができた。
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