研究課題/領域番号 |
16K17844
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今寺 賢志 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90607839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / ジャイロ運動論 / 乱流輸送 / 磁気面形状効果 / 捕捉電子モード / 大規模シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究期間において得られた成果は以下の3点である。 (A) 新たな固有関数展開ソルバーの開発:静電近似されたジャイロ運動論方程式系の一つである準中性条件を固有関数展開して解く数値計算手法を新たに開発した。本手法は従来と比較として少ないメッシュ数(固有関数の次数)で解くことが可能であり、Geodesic Acoustic Mode (GAM)の無衝突減衰テストからその妥当性が確認された。さらに、その開発したコードを用いて、磁場形状の楕円度、三角度が帯状流やGAMに与える影響について評価した。その結果、大域的ジャイロ運動論モデルで初めて、GAMに対する三角度の影響を明らかにした。 (B) 運動論的電子効果の実装:従来の断熱電子モデルを運動論的電子モデルに拡張し、イオン温度勾配(ITG)不安定性に与える影響に加え、新たに現出する捕捉電子モード(TEM)の解析を行った。その結果、密度勾配、電子温度勾配を固定してイオン温度勾配を増大させた場合、TEMからITGモードへの遷移が起き、バルーニング構造が反転することが線形解析から確認された。これはプラズマの自発回転の向きをイオン温度勾配で制御できる可能性を示唆している。 (C) 大規模並列計算に対するジャイロ運動論コードの最適化:数万コアによる大規模シミュレーションを想定して、我々が開発したジャイロ運動論コードの最適化を行った。具体的には、まずハイブリッド並列の実装を行い、更にMPI一対一通信のオーバーラップを行うことで計算速度の向上を試みた。その結果、従来のFlat MPIのケースと比較して、約25.8%の高速化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来の計画で2016年度に設定した目標は、(1)熱源駆動型ITG乱流による内部輸送障壁の形成、(2)ジャイロ運動論コードの最適化、の2点であった。 (1)については、研究が当初より早く進捗したため2015年度の時点で概ね完了し、【研究実績の概要】の(A)、(B)で記載したように、2016年度は次の段階である「新たな固有関数展開ソルバーの開発」と「運動論的電子効果の実装」を行うことができた。これらの開発に伴い、2017年度に予定していた「熱源駆動型TEM乱流による内部輸送障壁の自発形成」に現時点で着手できている。 (2)についても、上述の(C)の通り、「大規模並列計算に対するジャイロ運動論コードの最適化」を概ね達成し、運動論的電子モデルを実装した大規模数値シミュレーションを行う環境を整備することができた。 以上の結果から、当初の計画以上に研究は進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】の(A)、(B)、(C)で記載したように、研究は順調に推移しており、2017年度に予定していた「熱源駆動型TEM乱流による内部輸送障壁の自発形成」に現時点で着手できている。今後は、平成29年度A期HPCIシステム利用研究課題に採択されていることから、その計算機資源を有効利用して以下の2つの課題に取り組む。 (a) Cray XC40システムに対するジャイロ運動論コードの最適化:本年度から使用可能となった京都大学学術情報メディアセンターの大型計算機であるCray XC40システムに対して、ジャイロ運動論コードの最適化を行う。特に昨年度の作業において問題となったメモリスループットネックについて対策を講じ、Vlasovソルバーにおけるキャッシュ利用効率の向上等の検討を行う。 (b) 熱源駆動型TEM乱流における内部輸送障壁の自発的形成:(a)による高効率並列化を確保したのち、熱源駆動型TEM乱流の非線形シミュレーションを行う事で、内部輸送障壁の自発形成を目指す。用いる物理パラメーターについては、ITG乱流における知見を参考に選択する。さらに、様々な磁場配位、イオン/電子加熱、および運動量入力の組み合わせを検討することで、内部輸送障壁の自発形成における磁場形状と外部からの運動量/エネルギー入力方法のベストミックスを提案する。
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