本研究では、固体NMRによる非晶性物質の構造解析を可能とするため、固体NMRで得られる炭素13原子間の距離情報の精度の向上を目指す。2018年度では、アミノ酸中の1つの炭素のみを炭素13とした試料を用いて炭素間距離に対して12%程度の誤差で距離を求めることに成功した。 2019年度ではこれまでの結果のより詳細な検証を行った。得られる距離の精度の検証のためにデータ数を変えて距離の解析を行ったところ、データ数を増やすと得られる距離が長くなることが分かった。扱うデータ数を変えても試料中の炭素間の距離は一定であるため、解析方法になんらかの間違いがあると考えられる。検証の結果、計算は1つの分子内の炭素間距離を想定したモデルを用いたのに対し得られた実測データには隣接アミノ酸分子間の信号も含まれているため、データ数により距離が異なるという不可解な解析結果が得られたことが分かった。このため、分子間を考慮したモデルを導入すれば、より得られる炭素間の精度が向上できると期待される。 2019年度は上記の解析方法の検証のみ行ったため、学会、雑誌等での発表の実績はない。
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