本研究課題は,多数の分子からなる複雑な系において,本質的な少数の自由度を見出して理解することを目的として研究を遂行した。研究期間前半では,複雑な対象についての限られたデータの中から系の本質を明らかにするための基礎理論の構築を行うとともに,簡単なモデル系をテストケースとして本理論の有効性を示した。期間後半では,本理論を種々の具体的な分子系に当てはめることを目的とし,水溶液中のイオンの拡散運動,イオンペアの結合解離運動,生体高分子DNAの構造ゆらぎ,小さな生体分子であるジペプチド分子の構造転移について分子動力学シミュレーションを遂行してデータを収集し,本理論を適用して解析を行った。
|