研究課題/領域番号 |
16K17858
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今井 洋輔 九州大学, 基幹教育院, 助教 (90738816)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気二重層 / イオン間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では電気二重層での電荷間相互作用が誘起するソフト界面膜の不均一構造に関してその形成原理を物理化学的に解明することを目的としている。その中で、本年度は電気二重層における電荷間相互作用に関して以下のことを明らかとした。以下は表面張力測定の熱力学的解析と界面全反射XAFS測定の水和構造解析から調べられた。 【異なる符号の電荷同士が電気二重層で結合する際の結合の強さは、直接的なクーロン相互作用と水和に起因する間接的な相互作用とのバランスにより決まり、特に水和構造に大きな影響を受ける】トリメチルアンモニウム基と対アニオンの結合は、トリメチルアンモニウム基の対称的な水和構造のため、単純に水和エンタルピーの強さから評価することができ、両者の水和エンタルピーが近い値をとる時に強くなることが明らかとなった。一方で、イミダゾリウム基と対アニオンの結合では、イミダゾリウム基の水和構造はその化学構造と水素結合能により非対称であるため、平均的な水和エンタルピーから結合の強さを評価することは出来ないことが明らかとなった。この例では、水素結合のサイト特異的な効果が生じ、イミダゾリウムー対アニオン、イミダゾリウムー水分子、対アニオン-水分子間の相互作用の拮抗が結合の強さを決めることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では電気二重層での電荷間相互作用が誘起するソフト界面膜の不均一構造に関してその形成原理を分子間相互作用の観点から解明することを目的としている。その目的のために本質的に重要となるイオンの結合の強さに関して、直接のクーロン相互作用と水和を介した間接的な相互作用のバランスという普遍的な機構を提案し、それを一部のイオンを対象にしてではあるが実験により証明することが出来たため。これは界面に存在する分子が不均一に凝集配向する際の駆動力に関して、重要な知見を構築できたことを意味している。
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今後の研究の推進方策 |
界面膜の不均一構造が容易に形成されるアルコール単分子膜系にイオン性界面活性剤を混合した混合膜を作成し、ドメイン形成と電気二重層の効果の関係を調べる予定である。手法としては、ブリュースター角顕微鏡によるドメインの形態観察と全反射XAFS法による対イオン結合度の評価、X線反射率測定によるドメイン被覆率の評価、表面張力法による界面熱力学量の評価を行う。これらの結果を総合的に考察してドメイン形成に関して、対イオン結合と線張力の関係の観点から研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した実験試薬の価格が予想より低かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験試薬の購入費用に追加する予定。
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